○山形県の豊かな森林資源を活用した地域活性化条例
平成28年12月27日山形県条例第61号
山形県の豊かな森林資源を活用した地域活性化条例をここに公布する。
山形県の豊かな森林資源を活用した地域活性化条例
目次
前文
第1章 総則(第1条―第10条)
第2章 県民総参加の森林資源の活用による地域活性化
第1節 林業及び木材産業の振興に関する施策等(第11条―第18条)
第2節 森林資源の活用の促進に関する施策(第19条―第22条)
附則
県土の約7割を占める森林は、日本一の面積を誇るブナの天然林など美しい景観を形成するとともに、本県の豊かさの源となってきた。金山杉、西山杉等の銘木に代表される木材、山菜、きのこなどの林産物のほか、自然との触れ合いの機会や保健休養の場を人々にもたらした。また、水を蓄える水源(かん)養機能や山地災害などを防止する県土保全機能のほか、二酸化炭素を吸収する地球温暖化防止機能など、森林の公益的機能は、人々の暮らしに欠かせない役割を担ってきた。
森の恵みは、海の恵みにもつながっている。森に堆積した腐葉土から溶け出した養分を含む水は、清(れつ)なしぶきをあげながら渓流となって駆け下り、里を潤し、最上川や赤川などに集まって米どころ庄内平野を巡り、日本海に流れ込む。森は多様な生態系を育み、豊かな海を形づくった。
豊かな森の恵みは、人々の暮らしを支え、守り、食や文化の源となった。森の恵みへの感謝と自然に対する畏敬の念は、置賜地域に多く見られる草木塔に表れており、自然と共生する文化が受け継がれてきた。
林業及び木材産業は、木材の生産と利用を通して、豊かな森林を育て、守る大きな役割を果たしてきた。長い時間をかけて育てた木々を伐採して加工し、流通させる一方で、伐採の跡地には再び植栽し、森林を整備し、森林資源の循環利用を行いながら、地域の経済を支えてきた。
しかし、長期に渡る木材価格の低迷により、森林所有者の経営意欲が低下し、適切な森林施業が行われなくなり、荒廃のおそれのある森林が増加している。こうした林業及び木材産業の厳しい状況は、森林資源の循環利用を停滞させ、地域経済に影響を与え、地域の雇用は減少した。
このような状況で、県、市町村、森林所有者、事業者及び県民が一体となって、豊かな森林資源を積極的に活用することにより、森林資源の循環利用を再び強く推し進めることは、地域の活性化のために大変重要である。自然と共生しながら森の恵みを活用することで地域の食や文化など暮らしの豊かさを享受してきた本県の来し方に学ぶとともに、新たな価値を創造し、地域の活力を取り戻さなければならない。
ここに、県民総参加で豊かな森林資源を活用する取組を推進することにより、先人から受け継いできた森林を健全な姿で次の世代につなぎ、活力ある社会を実現することを目指して、この条例を制定する。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、本県の豊かな森林資源を活用した地域の活性化に関し、基本理念を定め、県、森林所有者、林業事業者及び木材産業事業者の責務並びに県民及び事業者の役割を明らかにするとともに、施策の基本となる事項等を定め、県民の総参加による森林資源の活用を推進することにより、林業及び木材産業の振興並びに森林の保全を図り、もって雇用を創出し、地域を活性化することを目的とする。
(定義)
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(1) 森林所有者 権原に基づき森林の土地の上に木竹を所有し、及び育成することができる者(国及び市町村を除く。)をいう。
(2) 林業事業者 森林施業(造林、保育、伐採その他の森林の施業をいう。以下同じ。)の事業を行う者をいう。
(3) 木材産業事業者 木材の加工又は流通の事業(以下「木材産業」という。)を行う者をいう。
(4) 森林の有する多面的機能 林産物の供給、水源の(かん)養、県土の保全、公衆の保健、自然環境の保全、地球温暖化の防止等の多面にわたる機能をいう。
(5) 建築関係事業者 建築物の設計又は建築工事の施工の事業を行う者をいう。
(6) 県産木材 県内で生産された木材(県内の森林に由来するものに限る。)をいう。
(7) 観光関係事業者等 旅行業、宿泊業、飲食業、運輸業その他の観光に関する事業を行う者並びにこれらの者で組織される団体及び観光振興を目的として組織される団体をいう。
(8) 再造林 人工林の伐採跡地において、再び苗木を植栽する等の方法で森林を造成することをいう。
(9) 未利用間伐材等 間伐により得られた木材、端材等のうち、建築材料、工作物等の資材としての利用、パルプ、紙等の製品の原材料としての利用等に供されておらず、かつ、供される見込みのないものをいう。
(10) 木質バイオマス 動植物に由来する有機物である資源(原油、石油ガス、可燃性天然ガス及び石炭を除く。)のうち木に由来するものをいう。
(11) 特用林産物 山菜、きのこ等の林産物のうち、木材(桐材を除く。)を除いたものをいう。
(基本理念)
第3条 本県の豊かな森林資源を活用した地域の活性化は、長期的な展望に立ち、森林の有する多面的機能の維持との調和に留意しながら、県、市町村、森林所有者、林業事業者、木材産業事業者、建築関係事業者、その他の事業者及び県民の適切な役割分担並びに相互の連携及び協力の下、将来にわたり継続的に推進されなければならない。
(県の責務)
第4条 県は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、本県の豊かな森林資源を活用した地域の活性化に関する施策を策定し、及び総合的かつ計画的に実施する責務を有する。
2 県は、前項の施策を実施するに当たっては、国及び市町村と緊密な連携を図るものとする。
(森林所有者の責務)
第5条 森林所有者は、基本理念にのっとり、県が実施する施策に協力するとともに、森林の有する多面的機能が持続的に発揮されるように、その所有する森林の適正な整備及び保全に積極的に取り組むよう努めるものとする。
(林業事業者の責務)
第6条 林業事業者は、基本理念にのっとり、県が実施する施策に協力するとともに、森林の適正な整備及び保全並びに林業の振興に積極的に取り組むよう努めるものとする。
(木材産業事業者の責務)
第7条 木材産業事業者は、基本理念にのっとり、県が実施する施策に協力するとともに、その事業活動における県産木材の利用及び木材産業の振興に積極的に取り組むよう努めるものとする。
(県民等の役割)
第8条 県民及び事業者(第2条第2号及び第3号に掲げる者を除く。第14条第1項において同じ。)は、基本理念にのっとり、県が実施する施策に協力するとともに、森林の有する多面的機能の重要性及び森林資源の活用が地域の活性化につながることについて理解を深め、森林資源を率先して利用するよう努めるものとする。
(推進体制の整備)
第9条 県は、豊かな森林資源を活用した地域の活性化に関する施策を推進するため、国、市町村、森林所有者、林業事業者、木材産業事業者、建築関係事業者、観光関係事業者等その他の関係者が、意見を交換し、及び相互に協力するための体制を整備するものとする。
(財政上の措置)
第10条 県は、豊かな森林資源を活用した地域の活性化に関する施策を推進するために必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
第2章 県民総参加の森林資源の活用による地域活性化
第1節 林業及び木材産業の振興に関する施策等
(県産木材の安定供給の推進)
第11条 県は、県産木材の安定供給を推進するため、森林の適正な整備及び保全の実施に必要な施策を講ずるものとする。
2 県は、県産木材の生産体制を強化するため、森林の境界の明確化、路網の計画的な整備、高性能林業機械(2以上の作業を一の工程の中で行うことができる林業機械をいう。)の導入及び森林施業の集約化の促進その他の必要な施策を講ずるものとする。
3 県は、林業事業者が森林所有者相互の森林施業に関する合意形成の仲介、林業経営に関する計画の提案等により県産木材の安定供給の推進に積極的な役割を果たすことができるよう、情報の提供その他の必要な施策を講ずるものとする。
(再造林の推進)
第12条 県は、森林資源の再生産を確保し、森林資源を持続的に活用していくため、再造林の実施に必要な施策を講ずるものとする。
2 森林所有者及び事業者は、前項の県の施策に積極的に協力するよう努めるものとする。
(県産木材の加工流通体制の強化)
第13条 県は、県産木材の加工及び流通の体制の強化を図るため、県産木材の加工及び流通に係る施設の整備の促進その他の必要な施策を講ずるものとする。
2 県は、木材産業の健全な発展を図ることにより県産木材の安定供給を確保するため、県産木材の需要の拡大のために必要な施策を講ずるものとする。
3 木材産業事業者は、認証制度の利用等により品質及び性能が明確にされた県産木材の供給に努めるものとする。
(県産木材の率先利用)
第14条 県は、県民及び事業者が、その日常生活及び事業活動において県産木材又は県産木材を用いた家具及び日用品を率先して利用するようにするために必要な施策を講ずるものとする。
2 県は、県が整備する建築物及び県の調達に係る土木工事等において、県産木材を率先して利用するよう努めるものとする。
3 建築関係事業者は、建築物における県産木材の利用を促進するため、その事業活動を通じて、県が実施する県産木材の利用促進に関する施策に協力するよう努めるものとする。
4 県は、市町村が実施する県産木材又は県産木材を用いた家具及び日用品の率先利用に関する施策を支援するため、情報の提供その他の必要な施策を講ずるものとする。
(未利用間伐材等の有効利用の促進)
第15条 県は、未利用間伐材等の有効利用を促進するため、木質バイオマスの利用(熱源としての利用又はエネルギー源としての利用をいう。)又は当該利用のための加工に係る施設の整備、木質バイオマスの熱源としての利用又は新分野における利用の推進に資する情報の収集及び提供その他の必要な施策を講ずるものとする。
(研究開発の推進等)
第16条 県は、森林資源の再生産を確保し、及び森林資源の効率的な活用を推進するため、研究開発の推進、その成果の普及その他の必要な施策を講ずるものとする。
2 県は、県産木材の利用に関する事業者の研究開発を促進するため、国、大学その他の試験研究機関との連携、事業者への試験研究機関に係る情報の提供その他の必要な施策を講ずるものとする。
3 県は、県産木材を用いた製品及び県産木材の加工技術の開発を促進するため、新たな製品及び加工技術に係る情報の提供その他の必要な施策を講ずるものとする。
(人材の育成)
第17条 県は、林業を支える人材を確保し、及び育成するため、林業の魅力の発信、林業に係る教育、資格及び研修制度の充実、林業従事者の労働条件の向上の推進その他の必要な施策を講ずるものとする。
2 林業事業者は、前項の県の施策に協力し、その従業員を育成し、及び労働条件を向上するよう努めるものとする。
3 県は、県産木材の利用を促進するため、県産木材の生産、加工、流通、活用等の幅広い知識を有する人材の育成に必要な施策を講ずるものとする。
(林工連携等の推進)
第18条 県は、林工連携等(林業事業者及び木材産業事業者とその他の事業者との連携による新たな技術、製品又はサービスの開発をいう。)の推進により新たな木材の需要を喚起し、雇用の創出を図るため、異なる業種に属する事業者同士の交流の促進その他の必要な施策を講ずるものとする。
第2節 森林資源の活用の促進に関する施策
(特用林産物の振興等)
第19条 県は、特用林産物の生産を振興するため、生産体制の強化その他の必要な施策を講ずるものとする。
2 県は、特用林産物の消費を拡大するため、特用林産物に係る6次産業化(生産から加工及び流通までを総合的かつ一体的に行うことにより、新たな付加価値を生み出すことをいう。)の促進、流通体制の強化その他の必要な施策を講ずるものとする。
(魅力ある地域づくりの促進)
第20条 県は、森林資源を活用した魅力ある地域づくりを促進するため、森林資源を活用した都市と農山漁村との間の交流、森林資源に関する地域文化の継承、県産木材を利用した木造建築物による景観の形成及び森林の良好な景観、癒しの効果等の観光資源としての活用の促進その他の必要な施策を講ずるものとする。
(森林環境教育の推進)
第21条 県は、県民が森林の有する多面的機能及び木材の利用の意義について理解と関心を深めることができるよう、森林環境に関する教育(木育(木の良さ及びその利用の意義を啓発する活動をいう。)を含む。)の推進その他の必要な施策を講ずるものとする。
(参加意識の醸成)
第22条 県は、豊かな森林資源の活用により地域を活性化する取組への参加に関する県民の意識を醸成するため、豊かな森林資源を活用した地域の活性化に関する普及啓発、森林及び木造建築物を身近に感じることのできる機会の提供その他の必要な施策を講ずるものとする。
附 則
この条例は、公布の日から施行する。