○泉南市子どもの権利に関する条例
平成24年10月1日条例第26号
泉南市子どもの権利に関する条例
目次
前文
第1章 目的と基本原則(第1条―第3条)
第2章 「子どもにやさしいまち」の推進(第4条―第14条)
第3章 条例の実施と検証(第15条・第16条)
第4章 雑則(第17条)
附則
泉南市に生まれ育つすべての子どもが、「生まれてきて良かった」と心から思える「子どもにやさしいまち(チャイルドフレンドリーシティ)」を実現していくため、この条例を定めます。
この条例は、「子どもにやさしいまち」を実現していくにあたっての原則と具体化の方向について、可能な限り明らかにしようとするものです。
この「子どもにやさしいまち」の実現を、ユニセフ(国連児童基金)は世界のすべての国と都市に呼びかけています。「子どもにやさしいまち」は、国連が1989年に採択した児童の権利に関する条約(以下「子どもの権利条約」といいます。)に基づいて、市と市民が手を携えて、みんなで子どもの権利を大切にする「まち」です。
子どもの権利条約は、すべてのおとなに「子どもの最善の利益」を第一に考慮すること(条約3条)を求めています。そして「子どもの最善の利益」は、まず子どもの意見を尊重すること(条約12条)を通して具体化することができる、としています。
そこで、この条例の検討にあたり、泉南市の小学生が次の「泉南・子ども・憲章」を起草しました。

私たちは 泉南の子どもです。

私たちは、子どもの平和のために3日間かけて話し合いました。

私たちは、泉南の自然が多くて、元気なところが、好きです。

そんなまちが好きだからこそ、私たち子どものことを大切にしてください。


おかあさんやおとうさん、おうちのひとへ

家庭の中で暴力(DV)や虐待はないですか?

おとなの都合や事情で私たち子どもを巻き込む前に

私たち子どもの気持ちを理解してください。

私たち子どもの心や身体を傷つけないでください。

私たちもがんばりますから、自分で選んで、自分のペースですごさせてください。

どんな苦労があろうとも、笑顔がある家庭を子どもといっしょに、つくってください。


学校の先生へ

学びやすく、ひとりひとりの意見を大切にする、居心地のよい学校にしてください。

いじめのことを相談できる先生や場所を増やしてください。

いじめられている子どもを助けることができる学校にしてください。

いじめがなく、仲の良い学校(クラス)をいっしょにつくりましょう。


まちのおとなへ

子どもたちのために、公園の遊具を減らさないでください。

きれいで、安全なまちにしてください。

子どもたちも泉南のまちをよくしたいと考えていることを知ってください。


私たちの気持ちをきくときに大切にしてほしいことは

話を途中でさえぎらないで最後までちゃんときいてください。

きいたあとは、やさしく接してください。

すぐに評価するのは待ってください。


私たちは、他のひとの気持ちや意見をきくことも大切にします。

この泉南の子どもたちからのメッセージを読んで、あらためて思い起こされるのは、2002年5月、国連子ども特別総会に世界から集まった374人の子どもたちが書き上げたメッセージです。それは次のように訴えています。

私たちは世界の子どもです。

私たちは子どもにふさわしい世界を望んでいます。

なぜなら、私たちにふさわしい世界は、

すべての人にふさわしい世界だからです。


私たちにふさわしい世界では、

子どもの権利が尊重されています。搾取・虐待・暴力はありません。

もう戦争もありません。必要な保健ケアが提供されます。

HIV/エイズがなくなります。環境が守られます。

貧困の悪循環はありません。教育が受けられます。


子どもたちが積極的に参加することができます。

私たちは問題の根源ではありません。私たちは問題解決に必要な資源です。

私たちは支出ではありません。私たちは投資です。

私たちは単なる若者ではありません。私たちはこの世界の市民なのです。

おとなのみなさんは私たちを未来と呼びます。

けれども、私たちは「いま」でもあるのです。


(参照:「私たちにふさわしい世界」日本ユニセフ協会訳、抄)

泉南の子どもたちの言葉は、世界の子どもたちの言葉と響きあっています。
子どもたちの声に耳を傾け、その思いを受け止め、さらに対話を深め、そうして子どもと、おとなとが、互いにパートナーとして、「子どもにやさしいまち」を実現していくため、この条例を制定します。
第1章 目的と基本原則
(条例の目的)
第1条 この条例は、児童の権利に関する条約(以下「子どもの権利条約」といいます。)に基づいて、泉南市を「子どもにやさしいまち」としていくため、その基本となる原則及び具体化の方向について定めるものです。
2 この条例の目的とする「子どもにやさしいまち」は、子どもの権利を尊重し、子育ちと子育てを社会で支え合う仕組みを整え、一人ひとりの子どもが人間としての尊厳を持って、子ども時代を幸せに過ごすことができるまちです。
(定義)
第2条 この条例における用語の定義は、次のとおりとします。
(1) 「子ども」とは、本市に住民票を置く人のほか、本市に住んでいたり、本市で学んでいたり、何らかの活動を本市で行っている原則として18歳未満の人をいいます。
(2) 「市民等」とは、本市に住民票を置く人のほか、本市に住んでいたり、本市で働いていたり、何らかの活動を本市で行っている人をいいます。
(3) 「子ども施設」とは、原則として児童福祉法(昭和26年法律第45号)に規定する児童福祉施設及び学校教育法(昭和22年法律第26号)に規定する学校その他子どもの保育、教育、文化及びスポーツ等に直接かかわる社会施設のことをいいます。
(子どもの権利の尊重)
第3条 子どもは、権利の主体として尊重され、いかなる差別もなく、子どもの権利条約に基づく権利を保障されます。
2 市及び市民等は、公私を問わず子どもにかかわるにあたっては、子どもの権利条約に基づき、子どもの声に耳を傾け、子どもの最善の利益を第一に考慮し、もって子どもの権利が擁護されるよう、不断に努めなければなりません。
3 市は、子どもの権利条約が子どもに保障する権利を確かに認識し、そしてこの認識を広く市民等とともに分かち合い、もってすべての人の権利と自由を尊重して自己の権利を行使することができる子どもの育成を促進するよう努めるものとします。
4 市は、子どもの生命、生存及び発達並びに意見表明及び参加に対する子ども固有の権利が尊重されるよう、必要な仕組みを整え、子どもが必要とする支援の提供に努めるものとします。
第2章 「子どもにやさしいまち」の推進
(子どもの意見表明と参加)
第4条 子どもは、家庭や子ども施設等さまざまな場面において、自分に何らか関係することや自分が必要としていることについて、自己の権利として自分の意見を表明したり表現したりして、その社会の一員として積極的に参加することができます。
2 市は、前項に基づいて、さまざまな場面で子どもの意見表明と参加が具体的に実現されるよう必要な施策を実施します。
3 市民等は、子どもの意見表明と参加について、これを積極的に理解して尊重し、支援していくなかで、子どもの最善の利益を不断に実現していくよう努めます。
(せんなん子ども会議)
第5条 市は、前条に基づいて、せんなん子ども会議を設置します。
2 せんなん子ども会議は、小学生、中学生、高校生その他の子どもにより構成します。
3 せんなん子ども会議は、子どもにかかわる事項について、市に対して意見を表明することができます。
4 市は、前項によりせんなん子ども会議が表明した意見について、これを尊重するよう努めるものとします。
(子どもの相談と救済)
第6条 子どもは、いじめや虐待、体罰その他の人権侵害を受けたとき、または受けそうな状況に置かれたとき、自己の権利として、その子ども自身が必要としている相談と救済を受けることができます。
2 市は、前項に定める子どもの相談と救済について、これを子どもが享受することができるよう、必要な仕組みを整えます。
3 子ども施設の職員及び親その他の保護者、子どもの身近にいる市民等は、子どもが必要な相談と救済を受けることができるよう、その子どもの最善の利益を第一に考慮して支援に努めます。
4 子どもや保護者等から相談を受ける立場にある市及び子ども施設は、その相談に際しては、子どものプライバシーの権利等を保護するとともに、子どもの意見表明と参加の権利を尊重し、その子どもの最善の利益を具体的に実現できるよう救済に努めなければなりません。
(子どもの居場所づくり)
第7条 子どもは、休息と余暇、遊び、学び、文化的及び芸術的生活への参加の権利を持ち、そのために必要な居場所その他の環境の提供を受けることができます。
2 市は、前項に基づいて、子どもの居場所づくりの推進に関する指針及び実施計画等を策定します。
(子どもの権利に関する学習と教育)
第8条 市は、市の職員及び子ども施設の職員が子どもの権利条約についての認識と理解を深め、この条例の具体的な実施に主体的に取り組み、もって子どもの最善の利益の実現に不断に努めることができるよう、子どもの権利に関する職員の積極的な学習及び研修等の機会を計画的に設けるものとします。
2 子ども施設は、当該施設を利用する子どもたちに子どもの権利条約を伝え、子どもが権利の主体として、子どもの権利条約を日々の生活に生かすことができる知識、スキル及び態度を身につけていくことができるよう、子どもの権利に関する積極的な教育及び啓発活動を教育課程等に位置付けて実施するものとします。
3 市及び子ども施設は、親その他の保護者及び市民等が子どもの権利条約に関する積極的な学習の機会を持つことができるよう、子どもの権利に関する社会教育、生涯学習および地域福祉活動等を奨励し、必要な条件整備を図ります。
(親その他の保護者の支援)
第9条 親その他の保護者は、子どもの権利を尊重し、子どもの発達する能力と一致する方法で、子どもの養育についての責任、権利及び義務を果たすことができるよう、必要な支援を受けることができます。
2 市は、親が子どもの養育と発達に対する第一次的責任を共同して果たすことを原則として、前項に定める保護者の権利等を保障するため、保護者との協働に努めるなかで、必要な仕組みの整備その他支援に努めなければなりません。
3 子ども施設及び市民等は、前2項を踏まえ、地域や社会で相互に協力して子育ちと子育てを支援するよう努めます。
(子ども施設職員の支援)
第10条 子ども施設の職員は、その職務を通して子どもの最善の利益を具体的に実現していくことができるよう、必要な支援を受けることができます。
2 市は、前項に定める支援を子ども施設の職員に適切に提供することができるよう、必要な条件整備等に努めるものとします。
(せんなん子ども支援ネットワーク)
第11条 子どもは、その最善の利益が第一に考慮されるなかで充実した子ども時代を過ごすために、社会から必要な支援を受ける権利を持っています。
2 市は、子どもが前項に定める支援を受けることができるよう、せんなん子ども支援ネットワークを組織します。
3 せんなん子ども支援ネットワークは、第1項に定める子ども支援が市及び子ども施設、子どもにかかわる市民等の自主・自発に基づく協働の取り組みとして推進されるよう、相互の情報発信や学習、交流や啓発等の取り組みを行います。
(施設等における子どもの安全)
第12条 市は、子ども施設その他子どもが利用する施設等における子どもの安全を確保するため、指針等を定めます。
2 市は、前項の指針等に基づいて、所管する施設等における子どもの安全確保のためのシステムを整備し、適切に機能するよう、必要な手立てを講じます。
3 市長は、前項のシステムの検証を行うものとし、そのために有識者等により構成する子どもの安全委員会を設けます。
4 市及び子ども施設は、前項で定める子どもの安全委員会の活動に対して、積極的に協力し援助するものとします。
(災害時における子どもの安全)
第13条 市は、台風、地震、津波その他の災害の発生時並びに復旧及び復興時における子どもの安全について、子どもの権利を基盤として、子どもの最善の利益を第一に考慮し、子どもの参加の権利を尊重するなかで確保するものとします。
2 市は、前項に基づいて、市の防災計画等の検証にあたるものとします。
(泉南市子どもの権利の日)
第14条 市は、子どもの権利条約が国際連合総会で採択された11月20日を泉南市子どもの権利の日とします。
2 市は、泉南市子どもの権利の日には、その意義を具現するための行事等を計画し、実施します。
3 市民等は、前項の行事等に協力し、又は連携しつつ独自に行事等を工夫するなどして、第1項の意義を具現するよう努めます。
第3章 条例の実施と検証
(条例の実施と広報)
第15条 市は、この条例の目的を達成するために、総合的かつ計画的に、この条例を実施するものとします。
2 市は、この条例の内容及び前項に定める実施に係る計画等について、これを市民等に広く知らせなければなりません。
(条例の実施に関する検証と公表)
第16条 市は、この条例が子どもの権利条約に基づいて、本市における子どもの最善の利益の具体的な実現に貢献していくことができるよう、この条例の運営状況及びこの条例に基づく事業等の実施状況について、これを定期的に検証します。
2 市長は、前項に定める検証を行うため、子どもの権利に関する識見を持つ有識者等で構成する、子どもの権利条例委員会(以下「条例委員会」といいます。)を設けます。
3 市は、広く子ども及び市民等から意見、提案を募る子どもの権利条例市民モニター制度を設けます。
4 条例委員会及び市民モニターは、相互に協力及び連携して、この条例の運営状況を検証するための活動を行い、条例委員会は市長に対して必要な報告等を行います。
5 市長は、前項により受けた報告等を広く市民等に公表するとともに、その内容を検討し、これを市の子ども施策等に活かすものとします。
6 市及び子ども施設は、本条で定める検証の実施にあたって、条例委員会及び市民モニターの活動に対して積極的に協力し援助するものとします。
第4章 雑則
(委任)
第17条 この条例で定めるもののほか必要な事項は、市長が別に定めます。
附 則
(施行期日)
1 この条例は、公布の日から施行します。
(報酬及び費用弁償条例の一部改正)
(次のよう略)