○泉南市自治基本条例
平成24年10月1日条例第25号
泉南市自治基本条例
目次
前文
第1章 総則(第1条-第3条)
第2章 基本原則(第4条-第6条)
第3章 まちを創る市民(第7条-11条)
第4章 まちを創る仕組み(第12条-第17条)
第5章 まちを創るための議会(第18条-第20条)
第6章 まちを創るための行政(第21条-第29条)
第7章 連携と交流(第30条-第33条)
第8章 実効性の確保(第34条・第35条)
附則
私たちのまち泉南市(以下「本市」といいます。)は、大阪府の南部に位置し、緑豊かな和泉山脈と豊(じょう)茅渟(ちぬ)の海がもたらす貴重な恵みを享受し、まちが形づくられてきました。熊野街道がまちの中央部を貫き、数多くの史跡とともに五穀豊穣を願う秋祭りなど、今でも往時の面影を残す四季折々の伝統と文化が息づいています。一方で、日本の国際拠点となる関西国際空港を対岸に臨み、人、モノ、情報の交流拠点として、世界の人たちとも手を携えることができる臨空都市としてその歩みを進めています。
私たちは、先人たちが守ってきた豊かな自然、育んできた歴史と伝統、そして切り拓いてきた世界への扉など、今日まで歩んできた軌跡をたどり、資産として次世代を担う子どもたちへ引き継ぎ、未来へ紡いでいく責務を有します。市民一人ひとりが自らの権利と責務を重く受け止め、先人たちの進取の気性と時代に対応できるたくましい行動力をもって、共に力を合わせ、支えあいながら地方分権時代にふさわしい個性あるまちづくりを進めていかなければなりません。
私たちは、このような決意のもと、まちづくりの主体として地方分権社会の到来を新たな飛躍の機会と捉え、魅力あるまちの創造に取り組むとともに、基本的人権を尊重して地域の絆を深めあい、自主、自立した地域社会の実現をめざすことを自治の基本理念とし、ここに泉南市自治基本条例を制定します。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、前文に掲げた理念に則り、泉南市における市民自治の基本原則、市民の権利と責務、市の役割と責務並びにまちづくりの仕組みを定めることによって、各主体が協働して個性豊かで魅力あるまちを創造するとともに自主、自立した自治体にふさわしい市民自治を実現し、もって市民福祉の向上を図ることを目的とします。
(条例の位置づけ)
第2条 この条例は、市民自治及びまちづくりの基本となる事項を定めるものであり、他の条例、規則等を制定改廃する場合には、この条例の趣旨を尊重し、整合性を図るものとします。
2 市は、他の条例、規則、規程、計画等についてこの条例のもとに体系的な整備を図るよう努めます。
(基本となる用語)
第3条 この条例で使用する基本となる用語は、次の各号に掲げるとおりとします。
(1) 市民 泉南市内に居住する人、在勤又は在学する人、市内で事業又は活動を行う者(以下「事業者」といいます。)をいいます。
(2) 市 本市の市議会及び市の執行機関をいいます。
(3) まちづくり 市民自治の確立のために行われる全ての公共的な活動をいいます。
(4) コミュニティ 一定の地域の人と人とのつながりを基盤として、自主的にさまざまな地域課題への取り組みを進めている団体及び知縁や不特定かつ多数の利益の増進に寄与することを共通目的として積極的に活動を展開している団体を合わせていいます。
(5) 参画 市民が、まちづくりに関する企画立案、実施及び評価の各段階において主体的に関与し、取り組むことをいいます。
(6) 協働 市民と市又は市民と市民が、それぞれの責任と役割を認識し、互いの特性を尊重しながら、連携及び協力して地域社会の共通課題の解決に取り組むことをいいます。
第2章 基本原則
(市民自治の原則)
第4条 市民及び市は、互いに自主性を尊重しあい、市民の参画を得て市民の意思に基づき、さまざまな地域課題に取り組むことを原則とします。
(情報共有の原則)
第5条 市民及び市は、各々が保有する情報が共有財産であることを認識し、互いに共有し、まちづくりに活用することを原則とします。
(参画と協働の原則)
第6条 市民及び市は、多様な主体によるまちづくりを推進するため、それぞれの役割と責務に基づいて参画し、協働することを原則とします。
第3章 まちを創る市民
(市民の権利)
第7条 市民は、国籍、性別、年齢等に関わらず、平等にまちづくりに参画する権利を有します。ただし、参加、不参加に関わらず差別的な取り扱いは受けるものではありません。
2 市民は、法令等により制限される場合を除き、市政に関して全てのことを知る権利を有します。
3 市民は、良好な環境で暮らし、活動する権利を有します。
4 市民は、活動に関して自主性、自立性が尊重される権利を有します。
5 市民は、市が提供するサービスを受ける権利を有します。
(こどもの権利保障)
第8条 市は、こどもがまちづくりに関する意見を表明、表現することができる機会を積極的に設けるとともに、その意見を尊重するよう努めなければなりません。
(市民の責務)
第9条 市民は、まちづくりの主体であることを認識し、積極的にまちづくりに参画するよう努めなければなりません。
2 市民は、まちづくりの主体としての多様性を認め、全ての人権を守るとともに弱者や環境に配慮するよう努めなくてはなりません。
3 市民は、まちづくりを通じて良好な環境を次世代へ引き継がなければなりません。
4 市民は、まちづくりに参画するにあたって自らの発言、決定及び行動に責任を持たなければなりません。
5 市民は、第7条に定める権利の行使にあたっては濫用することなく、常に公共の福祉に配慮するよう努めなければなりません。
(事業者の責務)
第10条 事業者は、市民として責務を遵守することと併せ、社会的な責任を自覚し、市民及び市と協働しながら地域との調和を図るとともに、まちづくりの推進に寄与するよう努めなければなりません。
2 事業者は、事業活動を行うにあたり、自然環境と生活環境に配慮するよう努めなければなりません。
(コミュニティ活動)
第11条 市民は、コミュニティ活動に積極的に参画し、交流を重ねながら地域課題に取り組むよう努めます。
2 市民は、コミュニティ活動を展開していく中で、新たな人材の育成とともに参画しやすい開かれた体制づくりに努めます。
3 市民は、地域の絆を深めてより広域的な地域課題の解決に取り組むため、一定のまとまりのある地域においてコミュニティ活動を行う組織を設置することができます。
4 市は、コミュニティ活動の自主性及び自立性を尊重し、協働して地域課題の解決に取り組むとともに、その活動を守り育てるため必要な支援に努めなければなりません。
第4章 まちを創る仕組み
(情報の公開・提供)
第12条 市は、市政に関する市民の知る権利を保障し、市政に対する理解と信頼を深めるため、市の保有する情報を公開するとともに、多様な媒体を活用して積極的に提供するよう努めます。
2 市民は、あらゆる機会を通じて市民同士の情報共有に努め、共有した情報を有効活用し積極的にまちづくりに活かすよう努めます。
3 情報の公開について必要な事項は、別に条例で定めます。
(個人情報の保護)
第13条 市は、情報共有の推進にあたり、市の保有する個人情報の開示、訂正、削除等を求める権利を保障するため、個人情報の適正な取り扱いについて必要な措置を講じます。
2 個人情報の適正な取り扱いについて必要な事項は、別に条例で定めます。
(意見公聴制度)
第14条 執行機関は、政策形成過程における市民参画の機会を創出するとともに市政の透明性と公平性の向上を図るため、市政に関する重要な事項について事前に案を公表し、広く市民から意見を聴取します(以下「パブリックコメント制度」といいます。)。
2 執行機関は、提出された市民の意見を十分に考慮して意思決定を行い、提出された意見に対する考え方を明確にして、結果と理由を公表しなければなりません。
3 パブリックコメント制度について必要な事項は、別に定めます。
(審議会等への参画)
第15条 執行機関は、審議会その他の附属機関の委員を選任する場合は、原則として全部又は一部を公募により選任するよう努めます。ただし、公募に適さないなど正当な理由がある場合はこの限りではありません。
2 執行機関は、委員の構成について男女の均衡、年齢、地域、国籍及び他の委員との重複に配慮しなければなりません。
(市民からの提言)
第16条 執行機関は、市民から意見、要望、苦情等があった場合は、速やかに事実関係を調査し、わかりやすく誠実に応答するとともに、これを市への提言と捉え、これからのまちづくりへ繋げていきます。
(住民投票)
第17条 住民は、市政に関する重要事項について広く住民の意思を確認するため、地方自治法(昭和22年法律第67号)第74条第1項の規定に基づき、当該事項にかかる住民投票の実施に関する条例の制定について市長へ請求することができます。
2 市議会の議員及び市長は、市政に関する重要事項について、直接住民へ意思を確認する必要があると認めるときは、住民投票を発議することができます。
5 市民及び市は、住民投票の結果を最大限尊重しなければなりません。
第5章 まちを創るための議会
(市議会の役割)
第18条 市議会は、市民の信頼に基づく負託に応え、本市の意思決定機関として、市の重要事項を議決します。
2 市議会は、執行機関について、市政運営を監視し、けん制する機能を有します。
(市議会の責務)
第19条 市議会は、積極的に情報を提供することにより市民との情報共有を図り、説明責任を果たすよう努めなければなりません。
2 市議会は、議会への市民参画を推進し、市議会の活性化を図るとともに開かれた議会運営に努めなければなりません。
3 市議会は、政策立案や政策提言に関する機能を強化し、その活用に努めなければなりません。
(議員の責務)
第20条 議員は、公正かつ誠実に責務を遂行することにより、市民への説明責任を果たすよう努めなければなりません。
2 議員は、市民との対話を心がけ、積極的に市民の意向把握や意見交換を行い、開かれた議会をめざさなくてはなりません。
3 議員は、自らの役割を深く自覚して、市民全体の利益を優先して行動し政治倫理の確立と自己研鑽(けんさん)に努めなければなりません。
第6章 まちを創るための行政
(市長の役割)
第21条 市長は、市民の信頼に基づく負託に応え、市政の代表者としてリーダーシップを発揮し、まちづくりのビジョンを示します。
2 市長は、市民参画と協働によるまちづくりを進め、市民福祉の向上をめざします。
3 市長は、経営感覚をもって効率的かつ効果的に市政を運営します。
(市長の責務)
第22条 市長は、まちづくりのビジョンを実現するため、俯瞰(ふかん)的に実情を把握し、総合的な市政運営に努め、市民への説明責任を果たさなければなりません。
2 市長は、市民福祉の向上を図るため、市民の視点に立って市民の参画を推進し、協働によるまちづくりの実現に努めなければなりません。
3 市長は、効率的かつ効果的に市政を運営するため、柔軟で機能的な組織づくりを行うとともに、職員の指揮監督に努めなければなりません。
(職員の責務)
第23条 職員は、全体の奉仕者として社会情勢や行政需要に的確に対応し、最少の経費で最大の効果をあげるため、市民の視点に立って公正、誠実かつ創意をもって政策課題に取り組まなければなりません。
2 職員は、市民との信頼関係を築き、積極的に協働して地域課題に取り組み、説明責任を果たさなければなりません。
3 職員は、その専門性と政策能力の向上をめざし熱意をもって自己研鑽に励むとともに、職務について責任を持ち、不断の改善に努めなければなりません。
(総合計画)
第24条 市長は、本市の将来の姿を明らかにし、政策資源を有効に活用して市政を総合的かつ計画的に運営するため、議会の議決を経て、めざすべき将来像を定める基本構想及び構想を実現するための基本計画(以下「総合計画」といいます。)を策定します。
2 総合計画は、市の政策を定める最上位の計画であり、執行機関が行う政策等は原則としてこれに基づかなければなりません。
(政策法務)
第25条 執行機関は、市民のニーズや地域課題を的確に把握し、地域の実情に応じた効果的な政策を展開するため、法令等の自主的な解釈、運用に努めるとともに、積極的に条例等の制定に取り組みます。
(財務)
第26条 執行機関は、最少の経費で最大の効果をあげるよう総合計画を踏まえて予算を編成し、効率的かつ効果的に執行することにより健全な行財政運営に努めます。
2 執行機関は、自主財源の確保に努めるとともに、中長期的な視点に立って財政基盤の強化を図ります。
(危機管理)
第27条 執行機関は、市民の安全を守り、安心して暮らすことができるまちづくりを進めるため、緊急事態に適切かつ迅速な対応ができる危機管理体制を整えるとともに、市民の自助、共助に関する活動を支援します。
(行政手続)
第28条 執行機関は、市政運営における公正の確保と透明性の向上を図り、もって市民の権利利益を保護するため、適正な行政手続の確保に努めます。
2 行政手続について必要な事項は、別に条例で定めます。
(説明責任)
第29条 執行機関は、政策等の企画立案、実施及び決定の各過程における状況と効果について、市民にわかりやすく説明する責任を果たさなければなりません。
第7章 連携と交流
(国及び大阪府との連携)
第30条 市は、国及び大阪府と対等、協力の関係にあることを踏まえ、互いの役割を認識し、役割分担に基づき連携及び協力して自主、自立したまちづくりを進めます。
(他の自治体等との連携)
第31条 市は、他の自治体及び関係機関と積極的な情報交換と相互理解を図り、連携及び協力して、広域的な共通課題の解決やまちづくりに取り組みます。
(市外の人々との交流)
第32条 市民及び市は、あらゆる分野における活動を通じて市外の人々と交流し、その人々の知恵や善意、提言をまちづくりに活用するよう努めます。
(国際交流)
第33条 市民及び市は、これからのまちづくりにおいて国際社会との関係や国際的な視点が重要であることを認識し、積極的に国際交流を促進するよう努めます。
2 市は、関西国際空港と連携及び協力して、世界の人、モノ、情報の交流拠点となる国際都市にふさわしいまちづくりを進めます。
第8章 実効性の確保
(条例の推進)
第34条 市は、この条例の目的を達成するため、条例を推進する体制を整備することにより、一層の実行性の確保に努めなければなりません。
(条例の見直し)
第35条 市は、社会情勢や地域社会の状況を勘案し、この条例についておおむね4年ごとに見直しを行い、改正する必要が生じた場合は速やかに改正し、実効性を確保するよう努めなければなりません。
2 市民及び市は、常に条例の実効性を確保することにより、この条例を将来にわたって育んでいかなければなりません。
附 則
この条例は、公布の日から施行します。ただし、第17条第3項及び第4項の規定は、規則で定める日から施行します。