埼玉県特殊詐欺撲滅条例

平成三十一年三月十九日
条例第八号

埼玉県特殊詐欺撲滅条例をここに公布する。
埼玉県特殊詐欺撲滅条例
(目的)
第一条 この条例は、振り込め詐欺をはじめとする特殊詐欺の被害が社会問題となっている現状に鑑み、特殊詐欺の撲滅を図るため、特殊詐欺の被害の防止に関し、県の責務等を明らかにし、及び特殊詐欺の被害の防止に関する基本的事項を定めることにより、特殊詐欺の被害の防止に関する対策を総合的に推進し、もって県民の財産を守ることを目的とする。
(定義)
第二条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号の定めるところによる。
 特殊詐欺 振り込め詐欺及び振り込め詐欺以外の特殊詐欺をいう。
 振り込め詐欺 次に掲げる詐欺(刑法(明治四十年法律第四十五号)第二百四十六条の罪をいう。以下この号及び次号において同じ。)及び電子計算機使用詐欺(同法第二百四十六条の二の罪をいう。ニにおいて同じ。)をいう。
 オレオレ詐欺 親族を装うなどして電話をかけ、会社における横領金の補填金等の様々な名目で現金が至急必要であるかのように信じ込ませ、動転した者に指定した預貯金口座に現金を振り込ませるなどの手口による詐欺
 架空請求詐欺 架空の事実を口実に金品を要求する文書等を送付するなどして、指定した預貯金口座に現金を振り込ませるなどの手口による詐欺
 融資保証金詐欺 融資を受けるための保証金の名目で、指定した預貯金口座に現金を振り込ませるなどの手口による詐欺
 還付金等詐欺 市町村の職員等を装い、医療費の還付等に必要な手続を装って、現金自動預払機(第七条及び第八条第二項において「ATM」という。)を操作させて口座間送金により振り込ませる手口による電子計算機使用詐欺
 振り込め詐欺以外の特殊詐欺 有価証券等の売買、宝くじの当せん番号等の特定の情報の提供、異性との交際のあっせんその他の名目で、対面することなく不特定多数の者に虚偽の情報を提供する等して、指定した預貯金口座に現金を振り込ませるなどの手口による詐欺等(前号に掲げる詐欺を除く。)をいう。
(県の責務)
第三条 県は、特殊詐欺の被害の防止に関する施策を総合的に推進する責務を有する。
 県は、特殊詐欺の被害の防止に関する施策の推進に当たっては、他の都道府県と連携を図るものとする。
(市町村への協力)
第四条 県は、市町村が特殊詐欺の被害の防止に関する施策を策定し、及び実施するために必要な協力及び支援を行うものとする。
(県民の役割)
第五条 県民は、県及び市町村が実施する特殊詐欺の被害の防止に関する施策に協力するよう努めるとともに、県、市町村等から発信される特殊詐欺の犯行の態様等の情報を踏まえ、キャッシュカード(預貯金の引出用のカードをいう。第七条及び第八条第二項において同じ。)、預貯金通帳等を第三者に渡さないようにする等、特殊詐欺の被害に遭わないよう適切な行動をとるよう努めるものとする。
 県民は、事業者が特殊詐欺の被害の防止に関する注意を喚起した場合は、これを踏まえた上で、特殊詐欺の被害に遭わないよう適切な行動をとるよう努めるものとする。
(事業者の役割)
第六条 事業者は、特殊詐欺の被害の防止に対する関心と理解を深め、県及び市町村が実施する特殊詐欺の被害の防止に関する施策に協力するよう努めるものとする。
(金融機関の役割)
第七条 金融機関は、特殊詐欺の犯行の態様等に鑑み、県と連携協力し、特殊詐欺の被害に遭いかけているおそれがある者に対する声掛け、ATMでのキャッシュカードの利用等に係る限度額の引下げその他の特殊詐欺の被害の防止に関する取組を実施するよう努めるものとする。
(普及啓発)
第八条 県は、特殊詐欺の被害の防止に対する県民及び事業者の関心と理解を深めることにより、被害に遭わないようにするとともに犯行に加担しないようにするため、特殊詐欺の被害の防止に関し、知識の普及及び啓発のための広報活動、教育活動その他の必要な措置を講ずるものとする。
 県は、特殊詐欺の被害の防止を図る上で金融機関等の事業者が果たす役割の重要性に鑑み、ATMでのキャッシュカードの利用等に係る限度額の引下げその他の金融機関等の事業者が実施する特殊詐欺の被害の防止に関する取組について広報活動その他の啓発を行うものとする。
(県民等の自主的な活動の促進)
第九条 県は、県民、事業者及びこれらの者が組織する団体(次条第二項及び第十三条において「県民等」という。)による特殊詐欺の被害の防止に関する自主的な活動を促進するため、助言その他の必要な措置を講ずるものとする。
(情報の提供)
第十条 県は、市町村に対して、特殊詐欺の発生状況その他の特殊詐欺の被害の防止のために必要な情報を提供するものとする。
 県は、県民等による特殊詐欺の被害の防止に関する自主的な活動及び県民等が適切な行動をとることを支援するため、情報を提供するものとする。
(被害防止のための助け合いの取組)
第十一条 県民は、家族及び地域住民との間で、互いに特殊詐欺の被害の防止に関する注意を喚起するよう努めるものとする。
 県民は、家族及び地域住民が特殊詐欺の被害に遭いかけているおそれがあると認めるときは、契約の締結及び現金の支払の中止を促すこと等により、特殊詐欺の被害の防止に努めるものとする。
(通報)
第十二条 県民は、次の各号のいずれかに該当するときは、警察官又は事業者への通報その他の適切な措置を講ずるよう努めるものとする。
 その言動から特殊詐欺の被害に遭いかけているおそれがある者を発見したとき。
 自己又は家族が特殊詐欺の疑いがある不審な電話、郵便物等を受けたとき。
 事業者は、前項の通報を受けたとき、又は商品等の流通若しくは役務の提供に際し、特殊詐欺の被害に遭いかけているおそれがある者若しくは特殊詐欺の犯行を行っていると疑われる者を発見したときは、警察官への通報その他の適切な措置を講ずるよう努めるものとする。
 警察官は、前二項の通報を受けたときは、当該通報について調査を行い、適正に処理するものとする。
(運用上の留意事項)
第十三条 この条例の運用に当たっては、県民等の自由と権利を不当に制限しないよう留意しなければならない。
(財政上の措置)
第十四条 県は、特殊詐欺の被害の防止に関する施策を推進するために必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
附 則
 この条例は、公布の日から施行する。
 県は、社会状況の変化等を踏まえ、必要に応じこの条例について見直しを行うものとする。