第三章 虐待の早期発見及び虐待への早期対応(第十三条―第十五条)
第四章 児童等に対する援助等(第十六条・第十七条)
第一条 この条例は、児童、高齢者及び障害者(以下「児童等」という。)に対する虐待の禁止並びに虐待の予防及び早期発見その他の虐待の防止等(以下「虐待の防止等」という。)に関し、基本理念を定め、県及び養護者の責務並びに関係団体及び県民の役割を明らかにするとともに、虐待の防止等に関する施策についての基本となる事項を定めることにより、当該施策を総合的かつ計画的に推進し、もって児童等の権利利益の擁護に資することを目的とする。
第二条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
ロ 養護者又は児童等の親族が当該児童等の財産を不当に処分することその他当該児童等から不当に財産上の利益を得ること。
ハ 施設等養護者が児童等を養護すべき職務上の義務を著しく怠ること。
ニ 使用者である養護者がその使用する児童等について行う心身の正常な発達を妨げ、若しくは衰弱させるような著しい減食又は長時間の放置、その使用する他の労働者によるイに掲げる行為と同様の行為の放置その他これらに準ずる行為を行うこと。
七 関係団体 児童福祉施設、学校、
高齢者虐待防止法第二条第五項第一号の養介護施設(第二十条第二項において「養介護施設」という。)、
障害者虐待防止法第二条第四項の障害者福祉施設(第二十一条第二項において「障害者福祉施設」という。)、病院等その他児童等の福祉に業務上関係のある団体をいう。
第三条 虐待は、児童等の人権を著しく侵害するものであって、いかなる理由があっても禁止されるものであることを深く認識し、その防止等に取り組まなければならない。
2 虐待の防止等は、特定の個人又は家族の問題にとどまるものではないことから、社会全体の問題として、県、県民、市町村、関係団体等の地域の多様な主体が相互に連携を図りながら取り組まなければならない。
3 虐待の防止等に関する施策の実施に当たっては、児童等の生命を守ることを最も優先し、児童等の最善の利益を最大限に考慮しなければならない。
4 養護者(施設等養護者及び使用者である養護者を除く。以下この項において同じ。)に対する支援は、それが虐待の予防に資するものであることに鑑み、養護者が虐待を行うおそれがないと認められるまで切れ目なく行われなければならない。
第四条 県は、前条の基本理念(第七条第二項及び第八条において「基本理念」という。)にのっとり、虐待の防止等に関する施策を策定し、及びこれを実施するとともに、必要な体制を整備するものとする。
2 県は、市町村に対し、福祉、保健、教育等に関する業務を担当する部局の相互の連携を強化し、児童等を守るための役割を主体的に担うよう求めるとともに、市町村が実施する虐待の防止等に関する施策に関し、必要な助言その他の援助を行うものとする。
3 県は、市町村と連携し、関係団体が行う虐待の防止等に関する活動について必要な協力を行うものとする。
第五条 養護者は、児童等に対し、虐待をしてはならない。
2 養護者は、自らが児童等の安全の確保について重要な責任を有していることを認識し、県、市町村及び関係団体による支援を受ける等して、その養護する児童等が安全に安心して暮らすことができるようにしなければならない。
第六条 養護者(施設等養護者及び使用者である養護者を除く。)は、その養護する児童等の生命、身体等が危険な状況に置かれないよう、その安全の確保について配慮しなければならない。
2 養護者(施設等養護者及び使用者である養護者に限る。)は、その養護する児童等の生命、身体等が危険な状況に置かれないよう、その安全の確保について専門的な配慮をしなければならない。
3 児童を現に養護する者は、その養護する児童の安全を確保するため、深夜(午後十一時から翌日の午前四時までの間をいう。)に児童を外出させないよう努めなければならない。
第七条 関係団体は、虐待を発見しやすい立場にあることを認識し、虐待の早期発見に努めるとともに、その専門的な知識及び経験を生かし、児童等及びその養護者に対する支援を行うよう努めるものとする。
2 関係団体は、基本理念にのっとり、県、市町村及び他の関係団体と連携し、県及び市町村が実施する虐待の防止等に関する施策に積極的に協力するよう努めるものとする。
第八条 県民は、基本理念についての理解を深め、県民と児童等及びその養護者との交流が虐待の防止等において重要な役割を果たすことを認識し、虐待のない地域づくりのために積極的な役割を果たすよう努めるとともに、県及び市町村が実施する虐待の防止等に関する施策に協力するよう努めるものとする。
第九条 県は、虐待の予防に資するため、市町村及び関係団体と連携し、児童等が安全に安心して暮らせるよう、養護者、県民等に対し、虐待の防止等に関する情報の提供及び相談の実施その他の必要な措置を講ずるものとする。
第十条 県は、児童に対する虐待の予防に資するため、市町村が養護者(施設等養護者及び使用者である養護者を除く。)に対し、妊娠、出産、育児等の各段階に応じた切れ目のない支援を行うことができるよう、情報の提供その他の必要な援助を行うものとする。
(乳児家庭全戸訪問事業等による児童虐待予防の取組)
第十一条 県は、児童に対する虐待の予防に資するため、市町村に対し、
児童福祉法第六条の三第四項の乳児家庭全戸訪問事業及び同条第五項の養育支援訪問事業(以下この条において「乳児家庭全戸訪問事業等」という。)の実施に関し、家庭への支援が適切に実施されるよう、情報の提供その他の必要な援助を行うものとする。
2 県は、市町村が乳児家庭全戸訪問事業等の対象となる全ての児童の状況を把握することができるよう、必要な措置を講ずるものとする。
3 県は、市町村に対し、乳児家庭全戸訪問事業等の実施状況について、必要と認める事項の報告を求めることができる。
第十二条 県は、虐待の防止等に関する県民の理解を深めるため、市町村と連携し、分かりやすいパンフレット等の作成及び配布、養護者に対する研修の実施その他の必要な啓発活動を行うものとする。
2 県は、学校の授業その他の教育活動において、児童の発達段階に応じた適切な虐待の防止等に関する教育を行う機会を確保するため、市町村と連携し、必要な施策を実施するものとする。
3 学校は、児童及びその保護者(
児童虐待防止法第二条の保護者をいう。)に対し、虐待の防止等のための教育又は啓発に努めなければならない。
第十三条 県は、早期に虐待を発見することができるよう、市町村と連携し、虐待を受けた児童等(虐待を受けたと思われる児童等を含む。以下この条及び第十五条において同じ。)を発見した者にとって通告又は通報を行いやすい環境、虐待を受けた児童等にとって届出を行いやすい環境及び虐待を受けた児童等の家族その他の関係者にとって相談を行いやすい環境の整備に努めなければならない。
2 県は、市町村と連携し、虐待を受けた児童等に係る通告、通報及び届出を常時受けることができる環境の整備に努めなければならない。
3 県は、虐待を受けた児童等に係る通告、通報、届出又は相談を行った者に不利益が生ずることがないよう、その保護について必要な配慮をしなければならない。
第十四条 県は、虐待の早期発見及び虐待への早期対応を図るため、個人情報の保護に留意しつつ、児童相談所、警察署、市町村、関係団体その他の虐待の防止等に関係するものの間における虐待に関する情報の共有の促進その他の緊密な連携の確保を図るための措置を講ずるものとする。
2 知事及び警察本部長は、虐待を防止するため、相互に虐待に関する情報又は資料を提供することができる。
3 知事及び警察本部長は、相互に情報又は資料を提供したときは、緊密な情報の共有を図るため、その後も引き続き相互に必要な情報又は資料の提供を行うものとする。
4 県は、虐待の防止等を適切に実施するため、他の都道府県その他の地方公共団体と連携し、虐待に関する情報を共有するよう努めるものとする。
第十五条 県は、虐待に関する通告、通報、届出又は相談を受けたときは、必要に応じ、市町村及び関係団体と連携し、速やかに、当該通告、通報、届出又は相談に係る虐待を受けた児童等の安全の確認を行うための措置その他の必要な措置を講ずるものとする。
第十六条 県は、虐待を受けた児童等に対し、虐待から守られた良好な生活環境の確保及び心身の健康の回復を図るため、市町村及び関係団体と連携し、必要な援助その他の必要な措置を講ずるものとする。
第十七条 県は、養護者(施設等養護者及び使用者である養護者を除く。以下この条において同じ。)の負担の軽減を図るため、市町村及び関係団体と連携し、情報の提供、相談の実施その他の必要な支援を適切に行うとともに、養護者が安心して子育て並びに高齢者及び障害者の養護を行うことができるよう、環境の整備を行うものとする。
2 県は、虐待を行った養護者が良好な家庭的環境を形成し、及び虐待を繰り返すことがないよう、市町村及び関係団体と連携し、当該養護者に対し、必要な指導及び支援その他の必要な措置を講ずるものとする。
第十八条 県は、県、市町村及び関係団体において専門的知識に基づき虐待の防止等が適切に行われるよう、これらに係る専門的知識を有する人材を育成し、及び確保するために必要な措置を講ずるものとする。
第十九条 県は、児童に対する虐待の防止等が専門的知識に基づき適切に行われるよう、これらの職務に携わる専門的な人材の資質の向上を図るため、児童の福祉に関する事務に従事する者に対する研修を実施するものとする。
2 児童福祉施設等の設置者若しくは事業を行う者又は学校の設置者は、その業務に従事する者又は教職員に対し、児童に対する虐待の防止等に関する研修を実施するものとする。
3 児童福祉施設等に係る業務に従事する者及び学校の教職員は、前項の規定による研修を受けるものとする。
第二十条 県は、高齢者に対する虐待の防止等が専門的知識に基づき適切に行われるよう、これらの職務に携わる専門的な人材の資質の向上を図るため、高齢者の福祉に関する事務に従事する者に対する研修を実施するものとする。
2 養介護施設の設置者又は
高齢者虐待防止法第二条第五項第二号の養介護事業を行う者は、その養介護施設従事者等に対し、高齢者に対する虐待の防止等に関する研修を実施するものとする。
3 養介護施設従事者等は、前項の規定による研修を受けるものとする。
第二十一条 県は、障害者に対する虐待の防止等が専門的知識に基づき適切に行われるよう、これらの職務に携わる専門的な人材の資質の向上を図るため、障害者の福祉に関する事務に従事する者に対する研修を実施するものとする。
2 障害者福祉施設の設置者又は
障害者虐待防止法第二条第四項の障害福祉サービス事業等を行う者は、その障害者福祉施設従事者等に対し、障害者に対する虐待の防止等に関する研修を実施するものとする。
3 障害者福祉施設従事者等は、前項の規定による研修を受けるものとする。
第二十二条 県は、市町村と連携し、県内で発生した児童等の心身に著しく重大な被害を及ぼした虐待について検証を行うものとする。ただし、県が行う検証と同等の検証を市町村が行う場合は、この限りでない。
第二十三条 県は、この条例の趣旨にのっとり、市町村と連携し、児童又は高齢者以外の者であっても、現に養護を受けている者で、特に必要があると認められるものについては、児童又は高齢者に準じて必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
第二十四条 県は、虐待の防止等を適切に実施し、及び虐待を受けた児童等に迅速かつ適切に対応するため、県、市町村、関係団体等の相互間の緊密な連携協力体制の整備に努めるものとする。
2 前項の連携協力体制の整備に当たっては、虐待を受けた児童等の適切な保護と養護者(施設等養護者及び使用者である養護者を除く。)に対する効果的な支援との両立が図られるよう配慮するものとする。
第二十五条 県は、虐待の防止等に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
2 県は、社会状況の変化等を踏まえ、必要に応じこの条例について見直しを行うものとする。