埼玉県薬物の濫用の防止に関する条例をここに公布する。
第二章 薬物の濫用の防止に関する基本的な施策(第六条―第十条)
第三章 薬物の濫用の防止のための規制(第十一条―第十八条)
第一条 この条例は、薬物の濫用による被害が深刻化している状況を踏まえ、薬物の濫用の防止に関し、県等の責務を明らかにし、基本的な施策及び薬物の依存症からの患者の回復の支援のための施策を定めるとともに、薬物の製造、販売等の規制を行うことにより、薬物の濫用による危害から県民の健康及び安全を確保し、もって県民が安心して暮らすことができる社会の実現に寄与することを目的とする。
第二条 この条例において「薬物」とは、次に掲げる物をいう。
七 前各号に掲げるもののほか、中枢神経系の興奮若しくは抑制又は幻覚の作用(当該作用の維持又は強化の作用を含む。第十一条第一項において「精神毒性」という。)を有する蓋然性が高く、かつ、人の身体に使用された場合に保健衛生上の危害が発生するおそれがあると認められる物
第三条 県は、薬物の濫用の防止に関する施策を総合的かつ計画的に推進する責務を有する。
2 県は、前項の施策の推進に当たっては、国及び他の地方公共団体並びに薬物の濫用の防止を目的とする団体との連携協力を図るものとする。
第四条 県民は、薬物の危険性に関する知識と理解を深め、薬物の濫用を防止するよう努めなければならない。
2 県民は、県が実施する薬物の濫用の防止に関する施策に協力するよう努めるとともに、薬物の濫用の防止に資すると認められる情報を得たときは、県に対し、当該情報を提供するよう努めなければならない。
第五条 不動産業を営む者又は不動産業を営む者を主たる構成員とする団体は、県が実施する薬物の濫用の防止に関する施策に協力するよう努めるとともに、薬物の濫用に係る不動産の利用の防止に資する取組を行うよう努めなければならない。
第六条 県は、薬物の濫用の防止に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な体制を整備するものとする。
2 知事及び公安委員会は、相互に連携協力を図りながら薬物の濫用の防止に関する調査、指導その他の措置を講ずるものとする。
第七条 県は、薬物の濫用の防止に関する施策を最新の科学的知見に基づき適切に実施するため、薬物に関する調査研究を行うとともに、薬物に係る試験及び検査に関する研究及び技術開発を推進し、並びにそれらの成果の普及を図るものとする。
2 県は、薬物に関する調査研究並びに薬物に係る試験及び検査について、国、他の地方公共団体その他薬物に関する研究機関に対し協力を求めることができる。
第八条 県は、薬物の濫用による危害から県民の健康及び安全を確保するため、薬物に関する情報について、収集及び整理を行うとともに、最新の科学的知見に基づく分析及び評価を行うものとする。
2 県は、薬物に関する情報について、国、他の地方公共団体その他薬物に関する研究機関に対し、その提供を求めることができる。
3 県は、第一項の規定による情報の分析及び評価の結果について、薬物の濫用の防止に関する施策及び薬物の製造、販売等の規制に的確に反映させるものとする。
4 県は、薬物の濫用による危害から県民の健康及び安全を確保するため、県民に対し、必要な情報を提供するものとする。
第九条 県は、県民が薬物の危険性に関する正しい知識に基づき行動することができるよう、教育及び学習の推進に必要な措置を講ずるものとする。
第十条 県は、薬物の依存症からの患者の回復に資するため、医療機関その他の関係機関及び薬物の濫用の防止を目的とする団体との連携を図るとともに、相談体制及び専門的な治療等に関する体制の整備その他の必要な措置を講ずるものとする。
第十一条 知事は、第二条第七号に掲げる薬物のうち、県の区域内において現に濫用され、又は濫用されるおそれがあり、かつ、最新の科学的知見に基づき精神毒性を有すると認められるものを知事指定薬物として指定することができる。
2 知事は、前項の規定による指定をしようとするときは、あらかじめ、埼玉県地方薬事審議会の意見を聴かなければならない。ただし、県民の健康及び安全を確保するため緊急を要する場合で、あらかじめ埼玉県地方薬事審議会の意見を聴くいとまがないときは、この限りでない。
3 前項ただし書の場合において、知事は、第一項の規定による指定を行った後、速やかに、その旨を埼玉県地方薬事審議会に報告するものとする。
4 第一項の規定による指定は、規則の定めるところにより、その旨を告示することにより行うものとする。
第十二条 前条第一項の規定による指定は、知事指定薬物が第二条第一号から第六号までに掲げる薬物に指定され、又は該当するに至ったときは、その効力を失うものとする。
2 知事は、前条第一項の規定による指定の必要がなくなったと認めるときは、当該指定を解除しなければならない。
3 前条第四項の規定は、前項の規定による解除について準用する。
4 知事指定薬物に関して適用される罰則の規定は、第一項の規定により知事指定薬物の指定の効力が失われる前又は第二項の規定により知事指定薬物の指定を解除する前にした行為についても、これを適用する。
第十三条 何人も、次に掲げる行為をしてはならない。ただし、第一号から第四号までに掲げる行為については、正当な理由がある場合として規則で定める場合は、この限りでない。
一 知事指定薬物(知事指定薬物を含有する物又は植物を含む。以下同じ。)を製造し、又は栽培すること。
二 知事指定薬物を販売し、授与し、又は販売若しくは授与の目的で所持すること(県の区域外における販売又は授与の目的で所持する場合を含む。)。
三 知事指定薬物を販売又は授与の目的で広告すること。
四 知事指定薬物を所持(販売又は授与の目的による所持を除く。)し、購入し、若しくは譲り受け、又は使用すること。
五 知事指定薬物をみだりに使用することを知って、その場所を提供し、又はあっせんすること。
2 前項の規定は、法第七十六条の六第二項の規定による命令を受けた者に係る物品については同項に規定する間、法第七十六条の七の二第二項の規定による命令を受けた者に係る物品については同項に規定する間、これらの命令に係る行為について、適用しない。
第十四条 知事は、この条例の施行に必要な限度において、その指定する職員に、知事指定薬物又はこれに該当する疑いがある物(以下この項、次項及び第二十四条において「知事指定薬物等」という。)を業務上取り扱う場所その他必要な場所に立ち入り、調査させ、若しくは関係者に質問させ、又は試験のため必要な最少分量に限り知事指定薬物等の提出を求めることができる。
2 公安委員会は、この条例の施行に必要な限度において、公安委員会規則で定める警察職員に、知事指定薬物等を業務上取り扱う場所その他必要な場所に立ち入り、調査させ、又は関係者に質問させることができる。
3 前二項の規定により立入調査を行う職員は、規則又は公安委員会規則で定めるその身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。
4 第一項及び第二項の規定による権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
第十五条 知事は、第十三条第一項の規定に違反した者に対し、必要な警告を発することができる。
2 第十三条第一項の規定に違反した者が、法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者であるときは、その法人又は人の業務に関しては、その法人又は人に対しても、前項の規定による警告を発することができる。
3 第一項の警告は、規則で定める様式による警告書を交付して行うものとする。
第十六条 知事は、前条第一項の規定による警告に従わない者に対し、その者が行う第十三条第一項各号に掲げる行為の中止(次項において「知事指定薬物の製造等の中止」という。)を命じ、又は知事指定薬物の回収若しくは廃棄その他必要な措置を採るべきことを命ずることができる。
2 知事は、次の各号のいずれかに該当するときは、第十三条第一項の規定に違反した者に対し、前条第一項の規定による警告を発することなく、知事指定薬物の製造等の中止を命じ、又は知事指定薬物の回収若しくは廃棄その他必要な措置を採るべきことを命ずることができる。
一 県民の健康及び安全を確保するため緊急を要する場合で、前条第一項の規定による警告を発するいとまがないとき。
二 第十三条第一項の規定に違反した者が、過去三年以内に前条第一項の規定による警告を受けたことがあるとき。
第十七条 知事は、第二条第七号に掲げる薬物の濫用により県民の健康等に重大な被害が生じ、又は生じる蓋然性が高いと認めるときは、第十一条第一項の規定により当該薬物を知事指定薬物として指定する前に、当該薬物(当該薬物を含有する物又は植物を含む。以下この項及び次条第二項において「勧告対象薬物」という。)を製造し、栽培し、販売し、授与し、所持し、販売若しくは授与の目的で広告し、購入し、譲り受け、又は使用する者に対し、その行為を中止し、又は勧告対象薬物の回収若しくは廃棄その他必要な措置を採るべきことを勧告することができる。
2 知事は、前項の規定による勧告をしたときは、速やかにその旨を公表するものとする。
第十八条 公安委員会は、第十三条第一項の規定に違反する行為を発見したときは、公安委員会規則で定めるところにより、知事に必要な措置を講ずべきことを要請することができる。
2 公安委員会は、勧告対象薬物の濫用により県民の健康等に重大な被害が生じ、又は生じるおそれがあると判断したときは、公安委員会規則で定めるところにより、知事に勧告等必要な措置を講ずべきことを要請することができる。
第十九条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。
第二十条 第十六条の規定による命令(第十三条第一項第一号又は第二号に掲げる行為に係るものに限る。)に違反した者は、二年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
第二十一条 次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
一 第十三条第一項第一号又は第二号の規定に違反してこれらの規定に掲げる行為をした者
二 第十六条の規定による命令(第十三条第一項第三号又は第四号に掲げる行為に係るものに限る。)に違反した者
第二十二条 第十三条第一項第三号又は第四号の規定に違反してこれらの規定に掲げる行為をした者は、六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
第二十三条 第十六条の規定による命令(第十三条第一項第五号に掲げる行為に係るものに限る。)に違反した者は、三十万円以下の罰金に処する。
第二十四条 第十四条第一項若しくは第二項の規定による立入調査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、同条第一項若しくは第二項の規定による質問に対して陳述をせず、若しくは虚偽の陳述をし、又は同条第一項の規定による知事指定薬物等の提出の要求に応じなかった者は、二十万円以下の罰金に処する。
第二十五条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、第二十条から前条までの違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して、各本条の罰金刑を科する。
この条例は、平成二十七年四月一日から施行する。ただし、第十三条、第十五条、第十六条、第十八条第一項及び第五章の規定は、平成二十七年五月一日から施行する。
この条例は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律(令和元年法律第六十三号)の施行の日から施行する。