埼玉県は、秩父の山々や武蔵野の面影を残す雑木林に代表されるあふれんばかりの緑、利根川や荒川などの河川が県土に占める面積の割合が全国一という豊かな水の流れ、さいたま新都心のビル群と見沼田んぼや
三富新田という都市と田園の両方の魅力、放射状に伸びる新幹線と縦横に貫く高速道路などの充実した交通網、盆栽や植木、鋳物、人形などの伝統産業から最先端の技術を誇る工業まで多種のものづくりなど、多彩な特性に恵まれています。
さらに、勇壮な屋台囃子の秩父夜祭、県名発祥の地であるさきたま古墳群、蔵づくりの街並みが残る川越などの歴史や文化、ご当地の味覚、盛んなスポーツなど、新旧さまざまな魅力にあふれています。
少子高齢化や人口減少が進み、社会全体の活力が低下している今、私たちは、こうした特性や魅力を十分にいかして、名所、旧跡などを巡るこれまでの観光はもとより、来訪者との心の触れ合う交流や、体験型観光をはじめとする新しい観光など、多様な形態の観光をつくることにより、明るく、元気で、住んでよかった、訪れてよかったと思える埼玉県にしていく必要があります。
そこで、県、市町村、県民、観光事業者及び観光関係団体が一体となって観光づくりを進めるため、この条例を制定します。
第一条 この条例は、本県の観光づくりについての基本理念を定め、県の責務並びに県民、観光事業者及び観光関係団体の役割を明らかにするとともに、観光づくりに関し必要な事項を定めることにより、県民生活の向上及び県民が誇れる地域社会の実現に寄与することを目的とする。
第二条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 観光づくり 名所、旧跡等を巡るこれまでの観光はもとより、地域の特性及び魅力をいかし、体験型観光、グリーンツーリズム(緑豊かな農山村地域において、その自然、文化、人々との交流等を楽しむ滞在型の余暇活動をいう。)その他の多様な形態の観光を創出する取組をいう。
二 観光事業者 観光に関係する事業を営む者をいう。
三 観光関係団体 観光事業者及び行政機関で構成する団体その他の観光に関係する活動を行う団体をいう。
第三条 観光づくりは、観光産業の振興にとどまらず、地域経済の持続的な発展、雇用機会の増大、豊かな生活環境の創造等による活力に満ちた地域社会の実現並びに自然、歴史、文化その他の地域の特性及び魅力の再確認による県民の愛県心の醸成につながるものであるという認識の下に推進されなければならない。
第四条 県は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、観光づくりに関する施策を総合的かつ計画的に推進するとともに、観光事業者及び観光関係団体への支援並びに市町村、観光事業者及び観光関係団体相互の連携促進を図る責務を有する。
2 県は、観光づくりにおける市町村の役割の重要性に鑑み、市町村が観光づくりに関する施策を積極的に講ずることができるよう必要な支援を行うものとする。
第五条 県民は、基本理念にのっとり、来訪者をおもてなしの心で温かく迎えるとともに、自然、歴史、文化その他の地域の特性及び魅力を守り、育みながら後世に伝えるよう努めるものとする。
2 県民は、地域における観光づくりに協力するよう努めるものとする。
第六条 観光事業者は、基本理念にのっとり、来訪者に快適なサービス及び環境を提供するよう努めるものとする。
2 観光関係団体は、基本理念にのっとり、県民、市町村、観光事業者及び他の観光関係団体と連携を図りながら観光づくりに資する活動を行うよう努めるものとする。
3 観光事業者及び観光関係団体は、県が実施する観光づくりに協力するよう努めるものとする。
第七条 県は、県民が来訪者をおもてなしの心で温かく迎えることができるよう、情報及び学習機会の提供その他の必要な施策を講ずるものとする。
第八条 県は、観光づくりに対する意欲及び知識を有する者並びに観光づくりについての指導者の育成に必要な施策を講ずるものとする。
第九条 県は、地域の特性及び魅力をいかした特産品の開発及び販売を促進するため、観光事業者等による特産品の開発及び販路開拓に当たっての助言その他の必要な施策を講ずるものとする。
第十条 県は、様々な機会及び媒体を通じて、国内及び国外に向けた積極的な観光情報の発信を行うものとする。
第十一条 県は、近隣都県との緊密な連携による広域的な観光づくりを推進するものとする。
第十二条 県は、国外からの来訪を促進するため、受入体制の整備その他の必要な施策を講ずるものとする。
第十三条 県は、すべての来訪者が安心して、安全かつ快適に観光ができる環境の整備を推進するものとする。
第十四条 県は、県内の観光地における良好な景観及び環境の保全及び形成を図るため、県民、市町村、観光事業者及び観光関係団体(第十六条第二項において「県民等」という。)が行う良好な景観及び環境の保全及び形成に関する活動並びに美化活動に関する取組に対する支援その他の必要な施策を講ずるものとする。
第十五条 県は、観光づくりのための基盤整備を図るため、観光に関する施設の整備、道路の整備、交通機能の充実その他の必要な施策を講ずるものとする。
第十六条 知事は、観光づくりに関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、観光づくりに関する基本的な計画(以下この条において「基本計画」という。)を定めるものとする。
2 知事は、基本計画を定めるに当たっては、あらかじめ、県民等の意見が反映されるよう必要な措置を講じなければならない。
3 知事は、基本計画を定めたときは、遅滞なく、これを議会に報告するとともに、公表しなければならない。
4 前二項の規定は、基本計画の変更について準用する。
5 知事は、毎年、基本計画に定められた観光づくりに関する施策の実施状況を議会に報告するとともに、これを公表しなければならない。
第十七条 県は、観光づくりに関する施策を推進するための体制を整備するとともに、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。