沖縄県自然環境保全条例(昭和48年沖縄県条例第54号)第11条第4項の規定に基づき、沖縄県自然環境保全基本方針を次のとおり決定した。
1 自然環境保全地域及び緑地環境保全地域等の指定方針
3 自然環境保全地域及び緑地環境保全地域等における保全施策
第3 公共施設における緑地の確保等に関する基本的事項
自然は、人間にとつて生存の基盤であり、生活のための資源であり、豊かな人間生活の源泉である。
沖縄県は、亜熱帯性気候のもとに広大な海域に囲まれた多くの島々からなつている。広大な海域は、黒潮の流路に当たり、島の沿岸には、さんご礁が発達している。島々は複雑な地形、地質からなり、それぞれの地域特性を創りあげている。そこには、亜熱帯特有の動植物や、固有の動植物が生息している。更に台風や干ばつ等の自然災害を被りやすい条件下におかれており、毎年その影響を受け、その影響は、島が小さければ小さいほど大きい。
県民は、このような自然環境の中で固有の文化をつくりあげてきた。なかでも県民生活と海との関係は深いものがある。県民生活における自然の役割を思うとき、自然がかけがえのない県民共通の遺産であることを深く認識し、その恩恵が現在及び将来の世代に享受できるよう本県の自然を保護することを県民共通の責務として最善の努力を払わなければならない。それ故開発は総合的な配慮のもとで慎重にすすめられなければならないことは、いうまでもない。それはいかなる理由による場合でも自然環境の保全に優先するものではない。
ところが、このようなかけがえのない本県の自然は去る大戦で壊滅的な破かいを被り、更に、それに続く軍事基地の構築によつて本県の固有の自然は、著しく変ぼうを余儀なくされた。そのうえ、自然の多様性を無視した画一的な土地利用がすすみ自然の調和をそこなつてきた。また、物質文明社会を維持発展させるために営まれる生産活動や消費生活に伴つて排出される各種の膨大な排出物、廃棄物は環境の汚染をもたらし、公害の要因を急速に増大せしめつつある。
本県の自然環境の特性にかんがみ、特に水は、島の生態系の維持に重要な役割を果しているが、本県の島々は、貯水、保水能力にとぼしく海に流れ去り易い。島における森林は、水源をかん養する天然の貯水槽となつており地域住民の生活に欠くことのできない重要な役割を果しているので、安易な転用や乱伐をしてはならない。また、石灰岩からなつている地域では、地下水が地域住民にとつて重要な水資源となつているが石灰岩の採掘は地下水の枯渇を招き、水質を低下させ海の汚染をもじやつ起するおそれがあるので、乱採掘はさけなければならない。
島の周囲に広がる浅海域は生物生産性の高いところであり、特に、サンゴ礁は天然の魚礁及び防波堤ともなつているので、安易な埋立を行つてはならない。
県は、乱開発による自然環境の破かいが県民生活に及ぼす多面的影響を認識し、現在破壊から免がれている自然の積極的な保護に努める。更に、自然を損傷したり破壊した場合は、すべて速やかに復元に努めるものとする。
以上の観点から、本県における自然環境の保全に関する施策の基本的方向は、次のとおりとする。
(1) 人為のほとんど加わつていない原生の自然地域、県を代表する傑出した自然景観更に学術上文化上特に価値の高い自然物等は、多様な生物種を保存し、あるいは、自然の精妙なメカニズムを人類に教えるなど、県の遺産として後世に伝えなければならないものである。いずれもかけがえのないものであり厳正に保護を図る。
(2) 県土の自然の均衡を維持する上で重要な役割を果す自然地域、すぐれた風景、すぐれた植物の自生地、野生動物の生息地、更に野外レクリエーションに適した自然地域等は、いずれも人間と自然との関係において欠くことのできない良好な自然であり、適正に保護を図るとともに必要に応じて復元整備に努力する。
(3) 自然の物質循環に生産力の基礎をおき太陽エネルギーの合理的利用が可能である農林水産業が営まれる地域は、食糧、林産物をはじめとする資源の供給面だけでなく、県土の保全、水源のかん養、大気の浄化等自然の均衡の維持という面においても必要欠くべからざるものであり、その環境保全能力を評価し健全な育成を図る。
(4) 都市地域における樹林地、草地、水辺地などの自然地域は、大気浄化、気象緩和、無秩序な市街地化の防止、公害、災害の防止等に大きな役割を果し、また、地域住民の人間形成にも大きな影響を与えるものであることから、健全な都市構成上、都市環境上不可欠なものについて積極的に保護育成し、あるいは、復元を図る。
(5) 本県の海岸線は、県土の直接の保全部分であると同時にすぐれた景勝地でもある。海岸線や浅海域の自然を破かいすることは、地域特性を失う結果となる。したがつて、海域のかく乱や汚染等の防止に努め、その保全を図る。
自然環境の適正な保全を図るためには、保全に関する調査研究に基づき保全対策を確立し、安定した保全が図られるよう監視体制を整備すると同時に管理上特に重要な私有地の公有地化に努め、保全施設の整備と自然の復元に努める。また、大規模な開発が行われる場合は自然環境に関する事前評価を実施する。
自然は、それを構成する諸要素の有機的な結合によつて成り立つており、おのずから、その均衡を維持しているのであるから、自然のしくみに応じた保全が必要である。
本県の自然環境の現状を的確には握し、効果的な保全対策を確立する基礎として、植生、野生動物、海中生物、地形、地質などの自然条件についての調査を実施し、実情に即した自然環境の保全を図る。
自然のしくみについては、未だ解明されていない部分が多く、これらの研究とともに、本県自然環境の特性の解明とそれに応じた保全、管理技術の研究に努める。
自然環境の保全に関する調査研究員及び研究調査の成果を具体的施策に反映させる技術者等専門的な能力を有する職員を置き、自然環境保全の体制充実に努める。
自然環境の適正な保全には、常時その監視指導が行き届く体制が必要であり、行政における自然環境保全のための監視体制の強化は重要な課題である。監視員は自然の賢明な利用の指導、違反行為の取締、許可、届出行為の追跡指導、自然環境の状況は握と緊急処理などの業務を行わせる。
自然環境の破壊を防止し、すぐれた自然環境を保全していくためには規制措置が必要であるが、私権との調整で摩擦が生じ易く保全の徹底が期しがたいので、将来に向けて安定した保全を図るため、特に重要な私有地については、必要に応じ国や県及び市町村が買上げるなど公有地化に努める。
本県には膨大な軍事基地が存在しているので、自然環境保全の施策を推進するにあたつては、返還前においてもこれら地域をも考慮に入れ、自然環境保全基礎調査に基づき、必要に応じ対策を関係機関に申し入れる等実効ある措置が講ぜられるよう努める。
自然環境を破壊するおそれのある開発が行われる場合、事業主体は、その事業が自然環境に及ぼす影響の予測、対策、代替案の比較等を含めた事前評を行い、それが計画に反映され住民に公表され理解を得たうえで行われるよう努める。また、事業主体は、自然環境の保全に必要な先行投資の確保を図るとともに開発実施の過程及び開発後においても、自然環境の保全のための措置が必要に応じ適切かつ、迅速に講ぜられるよう十分な注意を払わなければならない。
自然環境保全には、自然をそのまま放置することなく、破壊を防止する施設の整備、破壊された自然の修復並びに環境緑化を中心とする自然の創出と整備が必要である。
自然環境を保全するための施設は、利用に先行して整備することが重要であり、それは利用許容量を増大させることにもなるので、重要な自然地域では地域の態様に応じて、必要な自然環境保全の施設の整備に努める。
限られた自然を効果的に利用するため、植生の回復、緑化修景など破壊された自然の修復に努め再利用を図る。
都市、集落及びその周辺の身近かな生活域においては、現存する樹林地、池沼、丘陵、草原等良好な自然環境を保全するのみならず、公園、緑地、都市林等の造成整備、公共施設や住宅地、工場等の緑化の促進に努める。また、これらに必要な環境緑化材の円滑な供給を確立するため、その生産の拡大を図る。
自然環境の保全は、基本的には、県民すべてが自然に対する正しい理解と深い愛情をもち、保全、保護の精神を身についた習性とすることによつて達成される。このため、学校や地域社会における環境教育を積極的に推進し、自然のしくみや人間と自然との正しい関係について県民の理解を深め、自然に対する愛情とモラルの養成に努める。
自然のなり立ちを総合的に理解させ、自然と人間生活との関係を正しくは握させて、自然保護に対する基本的理解と見方、考え方を養成するため家庭や社会のあらゆる場において、有機的、継続的に実施され、広く県民に自然環境の保全の認識を定着させるように努め、社会教育における自然保護に関する教育活動の強化を図る。
県民すべてに自然に対する正しい理解を深めさせることは、ひとり教育活動のみによつて達成されるものではなく、教育活動との関連を保ちながら各種の広報媒体を通じて、県土の自然に対する正しい認識と自然保護に関する思想の普及、けいもうを図り、自然保護自主活動、県民運動の助長を図る。
自然環境の適切な保全には、
自然環境保全法や
沖縄県自然環境保全条例等の運用を強化するとともに、環境保全上実効ある措置を講ずる必要がある。したがつて、無秩序な開発を抑制し、自然環境の適切な保全を図るため、特に必要と認めるときは、関係行政機関と地域住民の同意を得て開発する者との間に自然環境保全に関する協定を締結する。
自然環境保全地域は、「自然環境保全に関する基本構想」に基づき、県土全域を対象として
沖縄県自然環境保全条例に規定する自然環境保全地域、緑地環境保全地域とともに体系的に選定され、適切に保全されなければならないが、それらについての基本的事項は、次のとおりである。
1 自然環境保全地域及び緑地環境保全地域等の指定方針
自然はひとたび破壊されるとその回復が困難であるばかりでなく、その周辺地域にも大きな影響を与える。そのため、社会的な要請として確保しておくべき重要な自然地について、自然環境保全地域に指定し、長期的な視点に立つてその保全を図る。
自然環境保全地域は、次のいづれかに該当する区域で自然的、社会的諸条件からみて、自然環境を保全することが必要なものについて指定する。特に、人の活動により影響を受けやすい自然で、破壊されると復元困難な地域、自然環境の特徴が特異性、固有性を有するもの及び周辺において開発が進んでおり、又は急激に進行するおそれがあるために、その影響を受け、すぐれた自然状態が損なわれるおそれのあるものについては、速やかに指定を図る。
ア すぐれた天然林が相当部分を占める森林の区域(これと一体となつて自然環境を形成している土地の区域を含む。)
イ 地形若しくは、地質が特異であり又は、特異な自然の現象が生じている土地の区域(これと一体となつて自然環境を形成している土地の区域を含む。)
ウ その区域内に生存する動植物を含む自然環境が、すぐれた状態を維持している海岸、湖沼、湿原又は、河川の区域。
エ 植物の自生地、野生動物の生息地、繁殖地、渡来地又は樹歳が特に高く、かつ、学術的価値を有する人工林が相当部分を占める森林の区域。
自然環境保全地域以外の区域で都市周辺における樹林地、池沼、河川又は海岸の区域のうち、自然的、社会的諸条件からみて、自然環境を保全することが必要なものについて指定する。
自然環境保全地域及び緑地環境保全地域以外の区域で、歴史的遺産と一体となつた自然の存する地域のうち、その自然環境を保護することが必要なものについて指定する。
自然環境保全法第22条第1項第5号に規定する海域以外の海域内に生存する熱帯魚、さんご、海そう、その他これらに類する動植物を含む自然環境がすぐれた状態を維持している海域のうち、自然的、社会的諸条件からみて自然環境を保全することが必要なものについて指定する。
地域住民に親まれてきた由緒由来のある樹木、並木のほか、老樹名木又は、学術的価値の高い樹木等について指定する。
自然環境の適正な保全をはかるため他法令に基づく規制によつてその目的が達成できる地域又は、開発を促進することを目的とする区域についても、自然環境保全指定地域を優先に調整を図る。また、農林水産業が営まれる地域については、住民の生業の安定、福祉の向上、資源の長期的確保等の自然的、社会的諸条件に配慮し、十分な調整を図る。
3 自然環境保全地域及び緑地環境保全地域等における保全施策
自然環境保全地域の保全対象である特定の自然環境を維持するため、その地域の自然環境の特質に応じた適正な保全を図る。
当該地域の生態系構成上重要な地区、あるいは特定の自然環境を維持するため、不可欠な核となるものについては、特別地区に指定し、自然環境の保全に影響を及ぼす行為を制限して厳正な保護を図る。
特別地区における特定の野生動植物で希少性、固有性を有するなどで厳正に保存を必要とする地区を野生動植物保護地区に指定し、当該特定の野生動植物の採捕については、厳しく制限してその保護を図る。
普通地区については、それが有する緩衝地帯としての役割を十分維持されるよう特定の行為を制限して適正な保全を図る。
当該地域は、地域住民の健康で快適な生活環境を形成するために必要な地域で、その役割が十分維持されるよう適正な管理を図り、当該地域の保全に影響を及ぼす行為を制限し、必要に応じ緑化を図る。
当該地域は、歴史的遺産と一体となつた自然の存する地域で、自然災害及び人的災害から守るため、適正な管理を図り、可能な限り広く保存する。
当該地区は、熱帯魚、さんご、海そうその他これらに類する動植物が生息するすぐれた海域で、当該海域を汚染又は、かく乱するおそれのある行為は、対陸域についても抑制し、適正な管理を図る。
当該樹木は、地域住民に親まれてきた由緒由来のある樹木や並木のほか、老樹名木、学術的価値の高い樹木等で、当該樹木を保護するため、標識等を設置し、適正な管理を図る。
保全地域内において、自然災害等により損傷が生じた場合は、自然環境の特性に応じ、速やかに復元又は、緑化を図る。
第3 公共施設における緑地の確保等に関する基本的事項
良好な生活環境の形成には、緑と空間は不可欠のもので、自然が失われつつある都市及びその周辺には、既存緑地を保全するのみならず、積極的に緑化を行い都市環境の改善を図る必要があり、その基本的事項は、おおむね次のとおりである。
官公署、学校等の緑化は、勤労環境、学習環境の改善のみならず、その地域の自然環境の確保と充実のためにも大切なものである。したがつて、十分な空地の確保と計画的な緑化が進められるよう努める。
民間における工場、住宅などの緑化は公共緑化とともに地域環境の整備に欠くことのできないものであり、開発に当たつては、可能な限り緑地を保存させることはもちろん積極的に緑化を進めるよう指導助力を行う。