○宮崎県家庭教育支援条例
平成28年3月23日条例第34号
宮崎県家庭教育支援条例をここに公布する。
宮崎県家庭教育支援条例
家庭教育は、全ての教育の出発点であり、子どもが「生きる力」の資質や能力を身に付けていく基礎になるものである。基本的な生活習慣、倫理観、自立心や自制心などは、家族の触れ合いを通じて、家庭で育まれるところが大きく、適切な家庭教育を受けることは、全ての子どもにとって大切である。
宮崎県では、「太陽とみどり」に象徴されるような豊かな自然、それぞれの地域で特色のある伝統や文化を大事にしながら、子どもの育ちを家庭と地域社会等が一体となって支えてきた。
しかしながら、少子化や核家族化の進行、地域のつながりの希薄化、経済格差の拡大による子どもの貧困の問題など、社会環境は一層深刻さを増してきている。このような状況の下で、家族形態が多様化し、子育てに不安を抱える親、孤立化する親も増えてきており、過保護や放任など家庭の教育力の低下が指摘されている。
このような中、家庭の教育力の向上を図るためには、これまで行われてきた家庭教育を支援するための取組をさらに進め、各家庭が改めて家庭教育において果たすべき役割の重要性を認識し、自主的に取り組むとともに、家庭を取り巻く地域、学校等、事業者、行政その他県民皆で家庭教育を支えていくことが必要である。
ここに、私たちは、各家庭が家庭教育に自主的に取り組むことができる環境整備に努めるとともに、家庭教育を地域全体で応援し、親としての喜びを感じられるような社会的気運を醸成することで、子どもたちが地域の宝として社会全体から愛情を受け健やかに成長できる宮崎の実現を目指して、この条例を制定する。
(目的)
第1条 この条例は、家庭教育が子どもの健全な成長に重要な役割を果たすことから、本県の家庭教育への支援についての基本理念及びその実現を図るために必要な事項を定め、家庭教育への支援に関する施策を総合的に推進することにより、基本的な生活習慣及び倫理観を確立するとともに、人生を自ら切り拓いていく上で欠くことのできない人生観や職業観、創造力などを培い、子どもたちが地域の宝として社会全体から愛情を受け健やかに成長できる宮崎の実現を目的とする。
(定義)
第2条 この条例において「家庭教育」とは、保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、子どもを現に監護するものをいう。)が子どもに対して行う教育をいう。
2 この条例において「子ども」とは、おおむね18歳以下の者をいう。
3 この条例において「地域活動団体」とは、社会教育法(昭和24年法律第207号)第10条に規定する社会教育関係団体、地方自治法(昭和22年法律第67号)第260条の2第1項に規定する地縁による団体その他の団体で地域的な共同活動を行うものをいう。
4 この条例において「学校等」とは、学校教育法(昭和22年法律第26号)第1条に規定する学校(大学を除く。)、児童福祉法(昭和22年法律第164号)第39条第1項に規定する保育所及び就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律(平成18年法律第77号)第2条第6項に規定する認定こども園をいう。
5 この条例において「事業者」とは、事業を行う法人その他の団体及び個人をいう。
(基本理念)
第3条 家庭教育の支援は、保護者が子どもの教育について第一義的責任を有するという基本的認識の下に、地域、学校等、事業者、行政その他の社会の全ての構成員が、家庭教育の自主性を尊重しつつ、それぞれの役割を果たすとともに、社会全体が一体となって取り組むことを旨として行われなければならない。
(県の責務)
第4条 県は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、家庭教育の支援を目的とした体制を整備するとともに、家庭教育を支援するための施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。
2 県は、前項の規定により施策を策定し、及び実施するに当たっては、市町村、保護者、地域住民、地域活動団体、学校等、事業者その他の関係者と連携して取り組むものとする。
3 県は、第1項の規定により施策を策定し、及び実施しようとするときは、保護者及び子どもの障がいの有無、保護者の経済状況その他の家庭の状況の多様性に配慮するものとする。
(市町村との連携)
第5条 県は、市町村が家庭教育を支援するための施策を策定し、又は実施しようとするときは、市町村に対して情報の提供、助言その他の必要な支援を行うものとする。
(国との連携等)
第6条 県は、国と連携協力して家庭教育の支援に関する施策の推進を図るとともに、家庭教育の支援に関して必要があると認めるときは、国に対し必要な施策を講ずるよう求めるものとする。
(保護者の役割)
第7条 保護者は、基本理念にのっとり、子どもに愛情をもって接し、基本的な生活習慣及び倫理観の確立、自立心の育成並びに心身の調和のとれた発達を図るとともに、自らが親として成長していくよう努めるものとする。
(地域住民等の役割)
第8条 地域住民は、基本理念にのっとり、保護者と連携して、家庭教育を行うために良好な地域環境の整備に努めるとともに、地域の歴史、伝統、文化、行事等を通じ、子どもの健全な育成に努めるものとする。
2 地域活動団体は、基本理念にのっとり、保護者及び学校等と連携し、家庭教育を支援するための取組を積極的に行うよう努めるものとする。
3 地域住民及び地域活動団体は、県及び市町村が実施する家庭教育を支援するための施策に協力するよう努めるものとする。
(学校等の役割)
第9条 学校等は、基本理念にのっとり、保護者、地域住民及び地域活動団体と連携して、子どもの健全な成長のために必要な基本的生活習慣を身に付けさせるとともに、子どもの自立心を育成し、心身の調和のとれた発達を図るよう努めるものとする。
2 学校等は、県及び市町村が実施する家庭教育を支援するための施策に協力するよう努めるものとする。
(事業者の役割)
第10条 事業者は、基本理念にのっとり、家庭教育における保護者の役割の重要性に鑑み、その雇用する従業員の仕事及び家庭生活との両立が図られるよう、必要な就業環境及び雇用環境の整備に努めるものとする。
2 事業者は、県及び市町村が実施する家庭教育を支援するための施策に協力するよう努めるものとする。
(親になるための学びの支援)
第11条 県は、親になるための学び(子どもが、家庭の役割、子育ての意義その他の将来親になることについて学ぶことをいう。以下この条において同じ。)を支援するため、親になるための学びの方法の開発及びその普及を図るものとする。
2 県は、地域住民、地域活動団体、学校等その他の関係者が、親になるための学びに関する学習の機会を提供することを支援するものとする。
(親としての学びの支援)
第12条 県は、親としての学び(保護者が、子どもの発達段階に応じて大切にしたい家庭教育の内容、子育ての知識その他の親として成長するために必要なことについて学ぶことをいう。以下この条において同じ。)を支援するため、親としての学びの方法の開発及びその普及を図るものとする。
2 県は、地域住民、地域活動団体、学校等その他の関係者が、親としての学びに関する学習の機会を提供することを支援するものとする。
(多様な家庭環境に配慮した支援及び関係者間の連携強化)
第13条 県は、多様な家庭環境に配慮した家庭教育支援の取組を推進するため、県民皆で支えあう環境づくりを促進するものとする。
2 県は、保護者、地域住民、地域活動団体、学校等、事業者その他の関係者が相互に連携して取り組む家庭教育を支援するための活動を促進するものとする。
(人材の養成等)
第14条 県は、家庭教育に関する支援を行う人材の確保、養成及び資質の向上並びに家庭教育に関する支援を行う人材相互間の連携を推進するものとする。
(相談体制の整備、充実等)
第15条 県は、家庭教育に関する相談に応ずるため、相談体制の整備及び充実、相談窓口の周知その他の必要な施策を講ずるものとする。
(広報及び啓発)
第16条 県は、科学的知見に基づく家庭教育に関する情報の収集、整理及び分析を行い、それらの情報を県民に提供するものとする。
2 県は、家庭教育の支援に関する社会的気運を醸成するため、家庭教育における保護者の果たす役割及び社会の全ての構成員が家庭教育を支援することの重要性について、県民の理解を深め、及び意識を高める啓発を行うものとする。
(財政上の措置)
第17条 県は、家庭教育を支援するための施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
(年次報告)
第18条 知事は、家庭教育を支援するための施策を取りまとめるとともに、その実績について、毎年度、議会に報告し、公表するものとする。
附 則
この条例は、平成28年4月1日から施行する。