○清瀬市みどりの環境をつくる条例
平成18年3月31日条例第6号
清瀬市みどりの環境をつくる条例
清瀬市は、雑木林、農地、屋敷林等が一体となった武蔵野の原風景を色濃く残し、けやき通りや志木街道の街路樹、医療福祉施設街のみどり、また市内を流れる柳瀬川や空堀川流域の豊かな自然環境などを資源とし、多様なみどりに彩られた安らぎと潤いのあるまちづくりを目指してきました。
しかし、都市化の波とともにみどりは次第に減少し、住環境への影響が憂慮されるなか、樹齢や樹形の優れた樹木、さらに多様な生物相をもつ雑木林や水辺の自然環境をその景観とともに保全、保護、復元することが急務となっています。
これら自然環境等は、清瀬の先人たちの関わり方を示す貴重な自然文化遺産でもあり、後世に受け継がせることが現代に生きる私たちの責務といえます。
ここに、私たち清瀬市民は、みどり豊かな自然環境が人間の存在と多様な動植物の生息に欠くことのできないことをあらためて認識し、人と自然が調和して共生できる環境づくりを基本理念に、市民、事業者、所有者等及び市におけるそれぞれの責務を明確にします。そして、積極的なみどりの保全と創生に努め、みどり豊かな住環境を次の世代へ継承できるようにするため、ここに条例を制定します。
第1章 総則
(趣旨)
第1条 この条例は、清瀬市(以下「市」という。)の豊かなみどりを市民共通の財産として位置付け、市民、事業者、所有者等(以下「市民等」という。)が、みどりの保全と創生に関して、共通の理解が得られるよう基本的な事項を定めるものとする。
(基本理念)
第2条 市の豊かなみどりに囲まれた環境を維持するため、何人もこの条例の理念に基づき、みどりの保全と創生に努めなければならない。
(定義)
第3条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(1) みどり 樹林、竹林、樹木、生け垣、草地、農地、公園、水辺等の植物主体とした生き物の生育環境をいう。
(2) 保全 みどりの保護及び植生管理をいう。
(3) 創生 みどりの育成及び回復、緑化等をいう。
(4) 事業者 市内で不動産取引及び同種の行為を、継続、独立して行う個人及び法人をいう。
(5) 所有者等 市内の土地、建物及びその他の施設を所有、占有又は管理するものをいう。
(市の責務)
第4条 この条例の理念に基づき、都市緑地法(昭和48年法律第72号)の規定に基づき策定した清瀬市みどりの基本計画(以下「みどりの基本計画」という。)の施策を積極的に推進しなければならない。
2 市は、みどりの保全及び創生について必要な措置を講ずるよう、国、地方公共団体等に要請するとともに、この条例の趣旨が十分反映されるよう関係機関等との調整に努めなければならない。
(市民等の責務)
第5条 市民等は、この条例の趣旨を遵守し、みどりの保全及び創生への意識を高め、地域の良好な環境をつくるため、自らの責任において必要な措置を講ずるとともに、市が実施する地域の特性を生かした街づくりの施策等に積極的に協力しなければならない。
2 市民等は、みどりの安易な伐採及び貴重な生物種の採取をしないなど、良好なみどりの環境の維持に配慮しなければならない。
3 事業者は、新たに住宅を取得し住民となる者等に対して、みどりの保全及び創生について、広告段階から周知するよう努めなければならない。
第2章 みどりの環境保全
(大規模事業敷地のみどりの環境保全)
第6条 市長は、5,000平方メートル以上の土地を所有又は占有する病院、事業所等の敷地において、植樹又は自生の樹木が樹林として保全する必要があると認める場合にあっては、みどり及びその景観の保全について、事業者、所有者等と協定を締結するよう努めなければならない。
2 前項の敷地において、土地の取引、区画形質等の変更又は建築を計画する場合にあっては、事業者、所有者等は、あらかじめ市とみどり及びその景観への影響について協議しなければならない。
3 市長は、前項の協議において、事業者、所有者等に対して、地域市民の意見が反映されたみどりの保全及び創生に関する土地利用計画書の提出を求めることができる。
(柳瀬川等流域の自然環境の保全)
第7条 市は、柳瀬川及び空堀川流域の水、野鳥、野草等、市の特性である崖線緑地や水辺の自然環境及びその景観を保全するため、河川等の管理者及び市民と協力して、その維持活動を積極的に進めなければならない。
2 市は、前項の維持活動について必要な支援を行うことができる。
(農と調和する景観の保全区域の指定)
第8条 市長は、雑木林、農地、屋敷林等が一体となった武蔵野の原風景を色濃く残す景観を、所有者等の同意を得て規則で定めるところにより、緑地環境保全区域(以下「保全区域」という。)として指定することができる。
2 前項の指定に当たっては、清瀬市みどりの環境保全審議会の意見を聴くものとする。
3 市長は、第1項に規定する保全区域の指定をするときは、あらかじめその旨を告示しなければならない。
4 前2項の規定は、第1項の指定を変更する場合に準用する。
(緑化重点地区における保全区域の指定)
第9条 市長は、みどりの基本計画に定める緑化重点地区において、特に保全が必要と認められるおおむね1,000平方メートル以上の樹林地のうち、次の各号のいずれかに該当するものを、所有者等の同意を得て規則で定めるところにより、保全区域として指定することができる。
(1) 地域の住民の健全な心身の保持及び増進又は環境学習の場若しくは防災に効果がある土地又は樹林地
(2) 特に良好な自然環境を有する土地又は樹林地
2 前項の指定に当たっては、清瀬市みどりの環境保全審議会の意見を聴くものとする。
3 市長は、第1項に規定する保全区域の指定をするときは、あらかじめその旨を告示しなければならない。
4 前2項の規定は、第1項の指定を変更する場合に準用する。
(保存樹木の指定)
第10条 市長は、樹齢及び樹形に優れ、自然景観及び自然遺産として保存が必要と認められる樹木等を、所有者等の同意を得て規則で定めるところにより、清瀬市保存樹木(以下「保存樹木」という。)として指定することができる。
2 前項の指定に当たっては、清瀬市みどりの環境保全審議会の意見を聴くものとする。
3 市長は、第1項に規定する保存樹木の指定をするときは、あらかじめその旨を告示しなければならない。
4 前2項の規定は、第1項の指定を変更する場合に準用する。
第3章 みどりの管理及び保全基準
(緑地環境保全区域等の協定)
第11条 市長は、前3条で指定した保全区域及び保存樹木(以下「緑地環境保全区域等」という。)に関する協定を、所有者等と締結するよう努めなければならない。
2 市長は、前項の目的を達成するために必要があると認めるときは、緑地環境保全区域等に関する助言又は指導をし、保全又は保存に必要な支援をすることができる。
(適正管理及び保全基準)
第12条 緑地環境保全区域等その他みどりの所有者等は、みどりを良好な状態で維持管理するよう努めなければならない。
2 市は、所有者等が緑地環境保全区域等を適正に維持管理するための基準として、清瀬市みどりの環境保全審議会の意見を聴き、清瀬市みどりの環境保全基準(以下「保全基準」という。)を定めるものとする。
3 緑地環境保全区域等の所有者等は、市と協議をし、保全基準に基づく緑地環境保全区域等の維持管理の実施手法を定めるものとする。
4 市は、保全基準に基づく当該緑地環境保全区域等の維持管理について、所有者等から要請があったときは、技術的及び専門的な指導及び助言を行う者を派遣することができる。
(緑地環境保全区域等における行為の制限)
第13条 緑地環境保全区域等において、次の各号のいずれかに該当する行為をしようとする者は、あらかじめ市長と協議をしなければならない。
(1) 住宅及び建築物その他の工作物を建築し、改築し、又は増築をすること。
(2) 宅地造成、土地の開墾、土石の採取その他の土地の区画形質の変更をすること。
(3) 駐車場、資材置場、作業場又は墓地を建設すること。
(4) 木竹の伐採又は移植をすること。
(5) 前各号に定めるもののほか、緑地環境保全区域等の保全及び景観に影響を及ぼすおそれがあると認められる行為
2 市長は、前項に規定する協議があったときは、清瀬市みどりの環境保全審議会の意見を聴いて、保全の可否の決定をしなければならない。
3 清瀬市住環境の整備に関する条例(平成18年清瀬市条例第5号)に、第1項各号に規定する行為に係る手続の定めがあるときは、同条例の手続を行う前に、この条例に基づく手続を行わなければならない。
(緑地環境保全区域等の区域外における行為の制限)
第14条 市長は、みどりの保全が必要と認める場合において、緑地環境保全区域等の区域外で前条第1項に規定する行為が行われたとき又はそのおそれがあると認めるときは、事業者、所有者等に対して、現状の維持及び原状の回復に必要な指導又は助言をすることができる。
2 市長は、事業者、所有者等が正当な理由なく前項の指導又は助言に従わないときは、当該事業者、所有者等に対して、勧告をすることができる。この場合において、当該勧告をしようとする事業者、所有者等に対し、あらかじめ当該勧告に従わないことの理由その他必要な事情を述べる機会を与えなければならない。
3 市長は、事業者、所有者等が正当な理由なく前項の勧告に従わないときは、当該事業者、所有者等に対して、是正に必要な命令をすることができる。
(行為の届出義務)
第15条 緑地環境保全区域等の所有者等は、次の各号のいずれかに該当する場合(第13条第1項に規定する行為に該当する場合を除く。)は、あらかじめ市長にその旨を届け出なければならない。
(1) 保全区域及び保存樹木が滅失し、又は枯死した場合
(2) 所有者等の変更がある場合
(3) 保全区域及び保存樹木の現状を変更する場合
(4) 植物の伐採又は採取及び移植をする場合
2 緑地環境保全区域等の保全に影響を及ぼすおそれのある区域外の土地の区画形質の変更をしようとする事業者、所有者等は、規則で定めるところにより、あらかじめ市長にその旨を届け出なければならない。
3 次に掲げる行為については、前項の規定は適用しない。
(1) 非常災害のために必要な応急措置として行う行為
(2) 緑地環境保全区域等の保全に支障を及ぼすおそれがないと市長が認める行為
4 前項第1号に規定する行為が発生した場合は、事業者、所有者等は、速やかに市長にその旨を届け出なければならない。
第4章 みどりの創生の推進
(住宅地の緑化の奨励)
第16条 市民等は、市内全域にみどりの創生を図るため、所有又は占有する土地へ花き、樹木等による植栽に努めなければならない。
2 市は、前項の植栽について、種苗の配布等の必要な支援に努めるものとする。
3 市は、生け垣、屋敷林等の景観に配慮した住宅地の緑化を図る支援に努めるものとする。
(公共施設における緑化の推進)
第17条 市は、新たに設置又は管理する道路、公園、学校、市庁舎、市民センター等の公共施設(以下「公共施設」という。)の緑化を先導的に推進しなければならない。
2 市は、前項に規定する緑化を推進するため、市民協働又は市民自らが緑化活動できる区域を設けるよう努めなければならない。
(緑化基準)
第18条 市は、公共施設及び民間施設の緑化の推進を図るため、緑化の目標、方法等に関する清瀬市のみどりの創生に関する基準(以下「緑化基準」という。)を定めるものとする。
2 市は、緑化基準に基づき、公共施設の緑化に努めなければならない。
3 市民等は、緑化基準に基づき、その所有し、又は占有する敷地等の緑化に努めなければならない。
4 市は、事業者に対し、緑化基準に基づき、緑化の指導及び助言を行うことができる。
5 市長は、事業者が前項に規定する指導及び助言に従わないときは、当該事業者に対して勧告をすることができる。
第5章 公表
(公表)
第19条 市長は、次に掲げるところによりこの条例の規定に従わないものがあるときは、清瀬市みどりの環境保全審議会の意見を聴いて、氏名等の公表をすることができる。
(1) 第6条第2項の協議及び同条第3項の土地利用計画書の提出をしない場合
(2) 第13条第1項の協議がない場合
(3) 第14条第3項の命令に従わない場合
(4) 第15条第1項及び第2項の届出がない場合及びその届出内容に虚偽があった場合
第6章 助成措置等
(助成等)
第20条 市長は、みどりの保全及び創生を図るため、次に掲げる所有者等に対して予算の範囲内において、必要な助成をすることができる。
(1) 第11条第1項に規定する緑地環境保全区域等の協定を締結した所有者等
(2) 第16条第3項に規定する生け垣の緑化を図る所有者等その他みどりの保全及び創生を図るため市長が必要と認めるもの
2 前項の規定は、国及び国の機関、独立行政法人、地方公共団体、地方独立行政法人並びに公益法人については適用しない。
3 第1項に規定する助成に関して必要な事項は、市長が別に定める。
(助成金の返還)
第21条 市長は、次に掲げる場合を除き、前条第1項に規定する助成金の交付を受けた所有者等が、この条例及びこの条例に基づく規則その他の規程に違反し、又は不正をしたときは、既に交付した助成金の全部又は一部を返還させるものとする。
(1) 緑地環境保全区域等を公共又は公益上の使用に供するとき。
(2) 所有者等からの申立て内容が合理的な理由として認められるとき。
(3) 市長が、特に第11条第1項の規定により締結した緑地環境保全区域等の協定の変更を認めるとき。
(報告、調査等)
第22条 市長は、この条例を施行するため必要があると認めるときは、関係者に対し、説明若しくは報告を求め、又は調査することができる。
(土地の買取り等)
第23条 市は、保全区域の所有者等から当該土地の買取りの申出があった場合において、保全のため特に必要があると認めるときは、清瀬市みどりの環境保全審議会の意見を聴いて当該土地の買取りに努めなければならない。
2 前項の買取りの申出の協議が整わないとき、又は買取り等の措置を採らない旨の決定があったときは、指定の解除があったものとみなす。
3 市は、保全区域外の土地であっても、隣接し保全区域のみどりの保全のため有効な土地と認めるときは、買取り又は寄附の申出を受けることができる。
4 市は、良好なみどりとして次世代に継承する緑地の購入等に関する選定基準を別に定めるものとする。
第7章 緑地保全基金の活用と他の保全対策
(緑地保全基金の活用等)
第24条 市長は、市民等と協働して、緑地環境保全区域等その他の樹木及び樹林地のみどりが保全できるよう、清瀬市緑地保全基金条例(昭和60年清瀬市条例第13号)に定める清瀬市緑地保全基金をその目的に沿って活用し、その他の財政的な措置を拡充する施策の推進に努めなければならない。
(みどりの環境保全団体等の育成等)
第25条 市は、みどりやその景観の保全を目的に活動する地域住民、ボランティアの団体等(以下「保全団体等」という。)の育成に努めなければならない。
2 市は、市民等がみどりの保全及び創生の推進に関して、意見交換、市への提言等ができる制度を立ち上げ、みどり豊かなまちづくりの推進に努めなければならない。
(表彰)
第26条 市は、この条例の規定に基づくみどりの保全及び創生の推進に著しく寄与し、又は貢献したと認められる市民等、保全団体等を表彰することができる。
第8章 清瀬市みどりの環境保全審議会
(清瀬市みどりの環境保全審議会)
第27条 みどりの保全及び創生に関する施策について必要な事項を調査及び審議するため、清瀬市みどりの環境保全審議会(以下「審議会」という。)を置く。
2 審議会は、市長からの諮問に応じ、この条例において審議会の意見を聴くこととされている事項その他市長が特に必要と認める事項を調査及び審議し、その結果を答申する。
3 審議会は、この条例に関する重要事項について必要があると認められるときは、市長に意見を述べることができる。
(委員の任期等)
第28条 審議会は、市長が委嘱する委員8人以内をもって組織する。
2 審議会の委員の任期は2年とし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。ただし、再任を妨げない。
3 前2項に定めるもののほか、審議会の組織及び運営に関して必要な事項は、規則で定める。
第9章 雑則
(委任)
第29条 この条例で定めるもののほか、この条例の施行に関して必要な事項は、規則で定める。
附 則
この条例は、規則で定める日から施行する。(平成17年9月規則第36号で、同18年10月1日から施行)