香川県障害のある人もない人も共に安心して暮らせる社会づくり条例

平成29年10月20日
条例第30号

香川県障害のある人もない人も共に安心して暮らせる社会づくり条例をここに公布する。
香川県障害のある人もない人も共に安心して暮らせる社会づくり条例
目次
前文
第1章 総則(第1条―第7条)
第2章 障害を理由とする差別の禁止(第8条)
第3章 障害を理由とする差別の解消に関する施策(第9条―第18条)
第4章 雑則(第19条)
附則
全ての県民が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重され、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し、支え合いながら共生する社会の実現は、私たち全ての願いである。
そして、障害の有無にかかわらず、全ての県民の個人としての尊厳が重んぜられる社会は、人生の各段階において、どのような状況であっても多様な価値観を認め選択できる社会であり、全ての県民がより自分らしく暮らせる社会につながるものである。
しかしながら、障害のある人の自立と社会参加は、その障害特性のみならず、障害や障害のある人に対する偏見、誤解等の意識上の障壁、障害のある人の社会参加を制約する物理的障壁など様々な社会的障壁により、今なお十分に果たされていない。
このような状況を踏まえ、私たちは、一人一人が障害や障害のある人に対する理解を深めるとともに、障害のある人が日常生活や社会生活を営む上で妨げとなる様々な社会的障壁について、建設的対話を通じて、互いを理解し、尊重し、互いに歩み寄ることで、これを取り除くよう、努力しなければならない。
ここに、私たちは、障害者の権利に関する条約、障害者基本法、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律等の趣旨を踏まえ、障害のある人もない人も共に安心して暮らせる社会の実現に向けて、県、市町、県民及び事業者が一体となって取り組むことを決意し、この条例を制定する。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、障害を理由とする差別の解消について、基本理念を定め、及び県の責務、市町の役割等を明らかにするとともに、障害を理由とする差別の解消に関する施策の基本的事項を定めることにより、全ての県民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し、支え合いながら共生する社会の実現に寄与することを目的とする。
(定義)
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(1) 障害のある人 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)、難病を原因とする障害その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。
(2) 社会的障壁 障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。
(基本理念)
第3条 第1条に規定する社会の実現は、次に掲げる事項を基本として図られなければならない。
(1) 全ての県民は、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有すること。
(2) 全ての障害のある人は、その社会参加を制約している社会的障壁の除去の実施について、合理的な配慮がされることにより、社会の様々な分野に参加し、及び協力することができること。
(3) 県、市町、県民、事業者その他関係機関が、各々の役割を果たすとともに、相互に協力して、社会全体で取り組む必要があること。
(4) 障害を理由とする差別の多くが、障害のある人に対する偏見、誤解その他の理解の不足から生じていること及び誰もが障害を有することとなる可能性があることを踏まえ、全ての県民が、障害及び障害のある人(以下「障害等」という。)に対する理解を深める必要があること。
(5) 障害を理由とする差別に関する紛争の防止又は解決に当たっては、当事者が互いの理解に努め、対等な立場で建設的な対話によること。
(6) 全ての障害のある人は、障害があることに、性別、年齢その他の要因が加わることにより特に困難な状況に置かれる場合においては、その状況に応じた配慮がされること。
(7) 県内に暮らす障害のある人の生活のみならず、県外から訪れる障害のある人に対しても、その状況に応じた配慮がされること。
(県の責務)
第4条 県は、前条に定める基本理念(以下単に「基本理念」という。)にのっとり、障害等に対する県民及び事業者(以下「県民等」という。)の理解を深めるとともに、障害を理由とする差別の解消に関する施策を総合的かつ計画的に実施するものとする。
 県は、市町が次条の施策を実施する場合にあっては、当該市町と連携し、及び協力するとともに、当該市町に対し、情報の提供、助言その他の必要な支援を行うものとする。
(市町の役割)
第5条 市町は、基本理念にのっとり、地域の実情に応じて、障害等に対する住民の理解を深めるとともに、障害を理由とする差別の解消に関する施策を推進するよう努めるものとする。
(県民等の役割)
第6条 県民等は、基本理念にのっとり、障害等に対する理解を深めるとともに、第4条第1項及び前条の施策に協力するよう努めるものとする。
 県民等は、障害のある人及びその家族等が障害による生活上の困難を軽減するための支援を求めやすい社会の実現に寄与するよう努めるものとする。
 障害のある人は、自らの障害の特性及び社会的障壁の除去のために必要な支援について、可能な範囲で周囲に伝えることにより、適切な支援が得られ、障害等に対する理解の促進が図られるよう努めるものとする。
(財政上の措置)
第7条 県は、障害等に対する理解を深め、障害を理由とする差別の解消に関する施策を実施するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
第2章 障害を理由とする差別の禁止
第8条 何人も、障害のある人に対して、障害を理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない。
 知事は、前項の行為を防止するため、福祉サービス、雇用、労働その他障害のある人の日常生活又は社会生活に関する分野において特に配慮すべき事項を別に定めるものとする。
第3章 障害を理由とする差別の解消に関する施策
(相談)
第9条 何人も、県に対し、障害を理由とする差別に関する相談をすることができる。
 県は、前項の相談があったときは、必要に応じ、次に掲げる措置を講ずるものとする。
(1) 相談に応じ、相談者に必要な助言、情報の提供等を行うこと。
(2) 相談に係る関係者間の調整を行うこと。
(3) 関係行政機関への通告、通報その他の通知を行うこと。
 県は、第1項の相談に適切に応じられるよう、相談体制の充実その他の必要な施策を講ずるものとする。
(助言又はあっせんの求め)
第10条 障害のある人は、前条第1項の相談を経ても障害を理由とする差別に関する事案(以下「対象事案」という。)が解決しないときは、知事に対し、助言又はあっせんを求めることができる。
 前項の規定は、対象事案に係る障害のある人の保護者、後見人その他の関係者について準用する。ただし、求めることが明らかに障害のある人の意に反すると認められるときは、この限りでない。
 第1項(前項において準用する場合を含む。)の規定による求め(次条において「助言等の求め」という。)は、法令に基づく不服申立て又は苦情の申出をすることができる行政庁の処分又は職務執行については、することができない。
(事実の調査)
第11条 知事は、助言等の求めがあったときは、当該求めに係る事実の調査を行うものとする。
 対象事案の当事者(助言等の求めを行った者を含む。以下「関係当事者」という。)その他の関係者は、正当な理由がある場合を除き、前項の調査に協力しなければならない。
 第1項の調査を行う職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があったときは、これを提示しなければならない。
(助言又はあっせん)
第12条 知事は、前条第1項の調査を行ったときは、香川県障害者相談等調整委員会に対し、当該調査の結果を通知するとともに、助言又はあっせんを行うよう求めるものとする。
 香川県障害者相談等調整委員会は、前項の規定による求めがあったときは、助言若しくはあっせんの必要がないと認めるとき、又は対象事案がその性質上助言若しくはあっせんを行うことが適当でないと認めるときを除き、助言又はあっせんを行うものとする。
 香川県障害者相談等調整委員会は、助言又はあっせんのため、必要があると認めるときは、関係当事者その他の関係者に対し、必要な資料の提出又は説明を求めることができる。
(助言又はあっせんの終了)
第13条 香川県障害者相談等調整委員会は、前条第2項の規定により助言又はあっせんを行った場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、当該助言又はあっせんを終了するものとする。
(1) 関係当事者が助言に従う意思を表示したとき、又はあっせん案を受諾したとき。
(2) 関係当事者が助言に従わない意思を表示したとき、又はあっせん案を受諾しないとき。
(3) 助言又はあっせんを継続することが困難であるとき。
 香川県障害者相談等調整委員会は、前条第2項の規定により助言若しくはあっせんを行わないとき、又は前項の規定により助言若しくはあっせんを終了したときは、知事に対し、その旨を報告するものとする。
(勧告)
第14条 香川県障害者相談等調整委員会は、知事に対し、次の各号のいずれかに該当する者に対して必要な措置を講ずべきことを勧告するよう求めることができる。
(1) 正当な理由なく、第11条第1項の調査を拒み、妨げ、又は忌避した関係当事者その他の関係者
(2) 第12条第2項のあっせんが行われた場合において、障害を理由とする差別をしたと認められる関係当事者が、正当な理由なく当該あっせんに従わないときにおける当該関係当事者
(3) 第12条第3項の規定による資料の提出若しくは説明を行わず、又は虚偽の資料の提出若しくは虚偽の説明を行った関係当事者その他の関係者
 知事は、前項の規定による求めがあった場合において、必要があると認めるときは、勧告を行うものとする。
(公表)
第15条 知事は、前条第2項の規定による勧告を行った場合において、当該勧告を受けた者が正当な理由なく当該勧告に従わないときは、その旨を公表することができる。
 知事は、前項の規定による公表をしようとするときは、あらかじめ、前条第2項の規定による勧告を受けた者に対し、意見を述べる機会を与えなければならない。
(障害者相談等調整委員会)
第16条 この条例の規定によりその権限に属させられた事項を処理するほか、知事の諮問に応じ、障害のある人の権利を擁護するための施策に関する重要事項の調査審議を行わせるため、香川県障害者相談等調整委員会(以下「調整委員会」という。)を置く。
 調整委員会は、委員15人以内で組織する。
 委員は、次に掲げる者のうちから、知事が任命する。
(1) 学識経験を有する者
(2) 障害のある人及び障害のある人の福祉に関する事業に従事する者
(3) 事業者を代表する者
(4) その他知事が適当と認める者
 委員の任期は、2年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
 委員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、同様とする。
 前各項に定めるもののほか、調整委員会の組織及び運営に関し必要な事項は、規則で定める。
(協議会)
第17条 県は、障害を理由とする差別に関する相談への対応及び当該相談に係る事例を踏まえた障害を理由とする差別を解消するための取組を効果的に行うため、関係機関により構成される協議会を組織し、当該協議会が円滑に運営されるよう必要な措置を講ずるものとする。
(普及啓発等)
第18条 県は、第1条に規定する社会を実現する上で障害のある人と障害のない人との相互理解の促進が重要であることに鑑み、障害等に対する県民等の関心と理解を深めるため、普及啓発その他必要な措置を講ずるものとする。
第4章 雑則
(委任)
第19条 この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。
附 則
(施行期日)
 この条例は、平成30年4月1日から施行する。
(附属機関を構成する委員その他の構成員の報酬等に関する条例の一部改正)
 附属機関を構成する委員その他の構成員の報酬等に関する条例(昭和32年香川県条例第43号)の一部を次のように改正する。
(次のよう略)