○福島市子どものえがお条例
令和3年6月23日条例第28号
福島市子どものえがお条例
雄大な吾妻連峰、清流荒川、四季折々のくだもの、泉質の異なる温泉地や色彩豊かな花々、そして緑豊かな信夫山などの自然に抱かれ、また作曲家・古関裕而氏に代表される芸術・文化の土壌により、本市の子どもが、豊かな心を持ち健やかに成長していくことは、市民全ての願いです。
子どもは、将来の主人公であり、地域の宝です。
全ての子どもは、多様な個性を持ち、無限の可能性を秘めています。
子どもが自分らしく成長するには、保護者による愛情のこもった養育や地域社会からの支援により整えられた適切な環境が必要です。また、子どもの生きる・育つ・守られる・参加する権利の保障を宣明する「児童の権利に関する条約」及び「児童福祉法」の趣旨に基づき、子どもが、1人の人間として、いきいきと健やかに育まれ、そして尊重されることが大切です。
福島県では、平成23年の東日本大震災に伴い、東京電力福島第一原子力発電所の事故が発生し、その試練を乗り越える本市の子どもや大人には、誰にも負けない誇りとたくましさがあります。
私たちは、こうした経験を踏まえ、今後、災害や感染症の流行など、どんな困難が起きようとも、ともに協力し合い、子どものえがおを守り続けることが大切であると信じています。
子どものえがおは、全ての人のえがおにつながります。
ここに、地域社会の全ての人がそれぞれの役割を果たし、地域社会全体で、やがて独り立ちする子どもの育ちや子育てを支援することにより、子どものえがおあふれる社会の実現を目指すため、この条例を制定します。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、魅力ある子育て環境の整備により、子どもが「福島市に育ってよかった」と誇りを持ち、「子育てするなら福島市」と称されるよう、子どもの育ちを支援するための基本理念を定め、市及び地域社会の役割を明らかにし、市全体で子ども・子育て支援のための施策(以下「子ども・子育て支援施策」という。)を総合的、継続的かつ安定的に推進することにより、福島市に子どものえがおあふれる社会が実現されることを目的とします。
(定義)
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによります。
(1) 子ども 18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある者をいいます。
(2) 保護者 親権を行う者、未成年後見人その他子どもを現に育てる者をいいます。
(3) 育ち学ぶ施設 保育所(児童福祉法(昭和22年法律第164号)第39条第1項に規定する保育所をいう。)、幼稚園(学校教育法(昭和22年法律第26号)第1条に規定する幼稚園をいう。)、認定こども園(就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律(平成18年法律第77号)第2条第6項に規定する認定こども園をいう。)、小学校等(学校教育法第1条に規定する小学校、中学校、高等学校、中等教育学校及び特別支援学校をいう。)その他子どもが育ち、学ぶことを目的として通学し、通所し、又は入所する施設をいいます。
(4) 地域住民等 市内に居住する者、通勤する者又は通学する者をいいます。
(5) 事業者 市内において事業を行う個人及び法人その他の団体をいいます。
(6) 子ども・子育て支援 子どもが健やかに成長することができるよう子ども及び子育てを行う者に対して行われる支援をいいます。
(基本理念)
第3条 子ども・子育て支援は、子どものえがおのために、次に掲げる事項を基本理念として行うものとします。
(1) 子どもが、性別、国籍、障がい、経済状況、家族の状況等によって、差別、体罰、虐待等を受けることなく、安心して生きていくことができ、かつ、1人の人間として尊重されること。
(2) 子どもが、健やかに育つために、子どもにとっての最善の方法及び子どもの幸せが追求され、自己肯定感が育まれる環境が整えられること。
(3) 子どもが、学びを通じ成長するとともに、必要な支援を受けることにより、社会で生活する能力を身に付けること。
(4) 子どもが、何を思い、何を感じながら行動し、又は活動しているか理解され、一人ひとりの個性及び可能性を伸ばすことができる環境が整えられること。
(5) 市、保護者、育ち学ぶ施設、地域住民等及び事業者がそれぞれの役割を果たすとともに、互いに連携協力して継続的に行われること。
第2章 地域社会の役割
(市の役割)
第4条 市は、子ども・子育て支援施策を総合的、継続的かつ安定的に推進するため、次のことに努めるものとします。
(1) 子ども・子育て支援施策を推進するための支援体制を確保すること。
(2) 保護者、育ち学ぶ施設、地域住民等及び事業者が互いに連携を図り、それぞれが役割を果たすことができるよう調整すること。
(3) 子ども・子育て支援施策を実施するため、必要な財政上の措置を行うこと。
(保護者の役割)
第5条 保護者は、子育てにおける最も大きな役割があることから、子どもが生活に必要な習慣を身に付け、心身ともに健やかに成長することができるよう子どもと過ごす時間を大切にし、深い愛情を持って子育てを行うものとします。
2 保護者は、子どもに対して、体罰を加えたり、虐待を行なったりしてはなりません。
(育ち学ぶ施設の役割)
第6条 育ち学ぶ施設は、未来を担う子どもに対して教育・保育を行うという重要な役割があることを認識し、次のことに努めるものとします。
(1) 子どもの年齢及び心身の発達に応じ、子どもが主体的に学び、育つことができるよう必要な支援を行うこと。
(2) 子どもが集団生活を通じ、豊かな人間性及び社会性を身に付けることができるよう必要な支援を行うこと。
(3) 育ち学ぶ施設において、保育を行う場合は、保護者が安心して子育てを行うことができるよう必要な支援を行うこと。
(地域住民等の役割)
第7条 地域住民等は、子どもが安心して暮らし、心豊かで健やかに成長することができるよう地域社会全体で愛情を持って育むという役割があることを理解し、次のことに努めるものとします。
(1) 地域行事その他社会性を育むことができる場を提供する等、子ども・子育て支援に積極的に関わりを持つこと。
(2) 見守り等により、犯罪、虐待等から子どもを守ることができるよう安全で安心な地域づくりを行うこと。
(事業者の役割)
第8条 事業者は、子ども・子育て支援に貢献するという社会的な役割があることを理解し、次のことに努めるものとします。
(1) 従業員と、仕事と子育てとを両立することができる働き方について意識の向上を図るとともに、子どもに深い愛情を持って接する時間を持つことができるよう職場環境を整えること。
(2) 市の施策並びに育ち学ぶ施設及び地域住民等が行う子どものための活動に協力すること。
(子どもの役割)
第9条 子どもは、命の尊さを知り、自分自身を大切にするとともに、人を思いやる心を持ち、互いに助け合うものとします。
第3章 基本的な施策の方向性
(子どもの成長に応じた切れ目のない支援)
第10条 子どものえがおのために、市は、誰もが安心して子どもを生み、育てることができるよう、妊娠、出産及び子育てへの適切な支援を切れ目なく行うとともに、地域社会との連携を強化していきます。
(子ども及び保護者からの相談への対応)
第11条 子どものえがおのために、市は、子ども及び保護者が抱える不安又は悩みを解消することができるよう、相談することができる体制を整備するとともに、関係機関との連携を強化していきます。
(子どもの居場所の確保)
第12条 子どものえがおのために、市は、子どもが安心して過ごし、遊び、学ぶための居場所の確保等に必要な施策を推進するものとします。
(子どもの社会参加等の促進)
第13条 子どものえがおのために、市は、子どもの主体性を大切にしながら、社会参加等の促進が図られるよう必要な施策を推進するものとします。
(保護者の居場所の確保)
第14条 子どものえがおのために、市は、地域において子育てを支援する拠点及び保護者が交流することができる場の確保等に必要な施策を推進するものとします。
(子ども及び保護者の健康の増進等)
第15条 子どものえがおのために、市は、子ども及び保護者の健康の増進を図るために必要な施策を推進するものとします。
(教育・保育の質の向上)
第16条 子どものえがおのために、市は、教育・保育の質の向上を図るとともに、子どもの豊かな人間性及び創造性を育むために必要な施策を推進するものとします。
(子どもへの虐待の予防等に関する取組)
第17条 子どものえがおのために、市は、子どもへの虐待の予防、早期発見及び迅速な対応に必要な施策を推進するものとします。
(支援を必要とする子ども及び保護者への取組)
第18条 子どものえがおのために、市は、疾病、障がい、貧困、家族の状況その他の事情により支援又は配慮を要する子ども及び保護者に対する必要な施策を推進するものとします。
(生活環境の整備等の促進)
第19条 子どものえがおのために、市は、子ども及び保護者が安全で安心して暮らすことができるよう生活環境の整備その他の必要な施策を推進するものとします。
(多世代の交流の推進)
第20条 子どものえがおのために、市は、地域において子どもの育ちの支援となるよう多世代の交流に必要な施策を推進するものとします。
第4章 子ども・子育てに関する施策の推進
(子ども・子育て支援事業計画)
第21条 市は、子ども・子育て支援施策を推進するために、子ども・子育て支援事業計画を策定するものとします。
(大学等との連携)
第22条 市は、大学、事業者等と連携し、子ども・子育て支援施策を検討し課題の解決に努めるものとします。
(普及啓発)
第23条 市は、この条例について、子どもを含め地域社会の全ての人が理解できるよう広く普及啓発を行うものとします。
第5章 雑則
(委任)
第24条 この条例の施行に必要な事項は、市長が別に定めます。
附 則
(施行期日)
1 この条例は、公布の日から施行します。
(経過措置)
2 この条例の施行の際、現に子ども・子育て支援法(平成24年法律第65号)第61条第1項の規定により策定されている計画は、第21条の規定により策定された計画とみなします。