○知立市子ども条例
平成24年9月28日条例第25号
知立市子ども条例
目次
前文
第1章 総則(第1条―第3条)
第2章 子どもにとって大切な権利(第4条―第8条)
第3章 子どもの権利を保障する大人の責務(第9条―第13条)
第4章 子どもにやさしいまちづくりの推進(第14条―第20条)
第5章 子どもの権利の侵害に対する救済と回復(第21条―第24条)
第6章 雑則(第25条)
附則
八橋のかきつばた、知立公園の花しょうぶ、東海道の松並木など多くの名所を有し、歴史と伝統に育まれたまち知立。豊かな文化が息づくこのまちで、子どもたちが健やかに成長し、未来を築いていくことは、市民の大きな願いです。
すべての子どもは、生まれながらにして、一人ひとりが独立した人格を持つかけがえのない存在です。子どもの権利が保障されることは、子どもが健やかに育つための条件であり、安心して暮らせる自由で平和な地域や社会の実現にとっての礎です。
子ども一人ひとりが尊重され、相互に尊重し合えること、子どもが安心・安全に暮らせること、子どもが個性を大切にされ、学び成長できること、子どもの参加が保障され、子どもの視点が取り入れられることは、子どもにとって大切な権利として保障されなければなりません。
私たちは、こうした考えのもと、子どもの権利を保障し、子どもにやさしい、夢を育むことのできるまちづくりを進めることを宣言し、ここに知立市子ども条例を制定します。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、児童の権利に関する条約(平成6年条約第2号)の理念に基づき、子どもの権利を保障し、地域社会全体で子どもの健やかな育ちを支えあう仕組みを定めることにより、子どもにやさしい、夢を育むことのできるまちの実現を目的とします。
(定義)
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによります。
(1) 子ども 市内に住んだり、市内で学んだり、活動したり、働いたりする18歳未満の人その他これらの人と等しく権利を認めることがふさわしい人をいいます。
(2) 保護者 親又は里親その他の親に代わり子どもを養育する人をいいます。
(3) 育ち・学ぶ施設 市内にある学校、児童福祉施設その他の子どもが育ち、学ぶために通学し、通園し、通所し、又は入所する施設をいいます。
(4) 施設関係者 育ち・学ぶ施設の設置者、管理者、教員及び職員をいいます。
(5) 地域住民等 市民並びに市内で活動を行う団体及び事業者をいいます。
(基本理念)
第3条 この条例により子どもの権利を保障し、子どもにやさしいまちづくりを進めることは、次の基本理念に基づきます。
(1) 子どもの幸せや子どもにとって最もよいことは何かを第一に考えます。
(2) 子ども自身の意思や力を大切にします。
(3) 子どもの年齢や発達に配慮します。
(4) 子どもと大人の信頼関係を基本に、地域全体で取り組みます。
第2章 子どもにとって大切な権利
(権利の尊重)
第4条 この章に定めるそれぞれの子どもの権利は、あらゆる機会において、子どもが、ひとりの人間として育ち、学び、生活していく上で大切な権利として、保障されます。
2 子どもは、自分の権利を学び、大切にするとともに、他の人の権利を認め、尊重するよう努めます。
3 子どもは、子ども同士や大人との間でお互いの権利を尊重し合うことができる力を身に付けるよう努め、そのために必要な支援を受けることができます。
(自分らしく生きる権利)
第5条 子どもは、自分らしく生きるために、次のことが保障されます。
(1) ありのままの自分を受け止めてもらえること。
(2) 自分の気持ちや考えを持ち、表明すること。
(3) 自分に関係することを、自分で決めること。
(4) 個性が尊重され、その個性を伸ばすことについて支援が受けられること。
(5) 体を休め、自由な時間を持つこと。
(6) プライバシーや名誉が守られること。
(安心して生きる権利)
第6条 子どもは、安心して生きるために、次のことが保障されます。
(1) 生命と心身が守られること。
(2) 愛情と理解をもって育まれること。
(3) 年齢や発達にふさわしい環境のもとで生活すること。
(4) 平和で安全な環境のもとで生活すること。
(5) 健康な生活ができ、適切な医療が受けられること。
(6) あらゆる差別や不当な不利益を受けないこと。
(7) あらゆる暴力を受けず、放置されないこと。
(8) あらゆる犯罪から心身ともに守られ、被害からの回復への支援を受けられること。
(9) 安心できる居場所を持つこと。
(育つ権利)
第7条 子どもは、豊かに育つために、次のことが保障されます。
(1) 必要な知識や情報が得られること。
(2) 必要な教育を受けたり、自ら学びたい内容を学んだりする機会が得られること。
(3) 文化、芸術、スポーツ及び社会体験を通じて豊かな人間性を育む経験が得られること。
(4) 遊ぶこと。
(5) 世代、性別、人種、国籍などが異なる様々な人々と触れ合うこと。
(参加する権利)
第8条 子どもは、自分に関係することについて、自ら参加するために、次のことが保障されます。
(1) 年齢や発達にふさわしい活動の機会が得られること。
(2) 年齢や発達に応じて意思決定に参加すること。
(3) 意思決定の参加の場で自分の気持ちや考えを表明することができ、尊重されること。
(4) 仲間をつくり、集まり、主体的な活動を行うことができ、適切な支援を受けられること。
第3章 子どもの権利を保障する大人の責務
(大人の共通の責務)
第9条 大人は、子どもの権利について理解し、その保障のために、第3条に定める基本理念に基づき、子どもに必要な支援を行わなければなりません。
2 大人は、子どもが自分の権利について理解し、自分や自分以外の人やものを大切にする気持ちを育み、人や社会との関わりの中で自らの力を発揮できるように支援しなければなりません。
3 大人は、大人としての自覚を持ち、お互いの連携を大切にしつつ、子どものよき手本となるよう努めなければなりません。
4 大人は、子どもに対して、虐待及び体罰を行ってはなりません。
5 大人は、あらゆる暴力、被害及び差別から子どもを守らなければなりません。
6 大人は、子どもの権利について理解し、その保障のために、意識の高揚に努めなければなりません。
(保護者の責務)
第10条 保護者は、その養育する子どもの権利の保障に努めるべき第一義的な責任者として、次のことに取り組まなければなりません。
(1) 子どもの幸せや子どもにとって最もよいことは何かを第一に考え、子どもの年齢や発達に応じた援助や指導をすること。
(2) 子どもと向き合い、子どもの気持ちや考えに耳を傾け、十分に対話をすること。
(3) 子どもが安心して過ごせる環境を確保すること。
(施設関係者の責務)
第11条 施設関係者は、子どもの教育や福祉に携わるものとして、次のことに取り組まなければなりません。
(1) 子どもが豊かに育つ環境や教育を充実させること。
(2) 子どもの気持ちや考えを受け止め、相談に応ずること。
(3) 虐待、体罰及びいじめの防止及び早期発見に努めるとともに、解決に向けて努力すること。
(4) 子どもの権利を理解し、保障するために、研修など職場環境を充実させること。
(地域住民等の責務)
第12条 地域住民等は、子どもとともに生活する地域社会の一員として、次のことに取り組まなければなりません。
(1) 子どもを地域社会の一員として認め、あたたかく見守ること。
(2) 子どもの気持ちや考えを尊重し、地域の行事や活動に参加する機会を設けること。
(3) 虐待等あらゆる暴力及び犯罪から子どもを守るため、安全で安心な地域づくりに努めること。
(市の責務)
第13条 市は、保護者、施設関係者及び地域住民等と連携し、及び協働し、子どもの権利を保障するために、必要な施策を実施しなければなりません。
2 市は、保護者、施設関係者及び地域住民等が、それぞれの責務を果たすことができるよう必要な支援を行わなければなりません。
3 市は、国や他の公共団体等と協力して、市の内外において子どもの権利が保障されるよう努めなければなりません。
第4章 子どもにやさしいまちづくりの推進
(子どもの権利の周知と学習支援)
第14条 市は、この条例と子どもの権利について周知を図るとともに、必要な取組を実施します。
2 市は、家庭、育ち・学ぶ施設及び地域において、子どもが自分の権利と他の人の権利を学び、お互いの権利を尊重し合うことができるよう必要な支援を行います。
3 市は、市民が子どもの権利について理解を深めることができるよう必要な支援を行います。
(子育て家庭への支援)
第15条 市は、子育てをしている家庭に配慮し、保護者が、子育ての喜びを実感し、安心して子育ての責任を果たせるよう必要な支援を行います。
2 市は、子育てをしている家庭に対し、仕事と子育ての両立を支援する環境づくりに努めます。
3 市は、特別な支援を求める子ども及びその家庭に配慮し、適切な支援を行います。
(子どもの虐待の予防などに関する取組)
第16条 市は、子どもに対する虐待の予防と早期発見に取り組みます。
2 子どもは、自らが虐待を受けたときや虐待を受けていると思われる子どもを発見したときは、市や関係機関に相談することができます。
3 施設関係者及び地域住民等は、子どもに気を配るとともに、虐待を受けていると思われる子どもを発見したときは、直ちに市や関係機関に通報しなければなりません。
4 市は、虐待を受けた子どもを迅速かつ適切に救済するために、関係機関と協力して、必要な支援を行います。
(子どもの安心・安全を保障する取組)
第17条 市は、保護者、施設関係者及び地域住民等と協力し、子どもが有害な環境や犯罪・災害などの被害から守られるよう必要な取組を実施します。
2 市は、子どもが安全で安心に暮らすことができるよう、公共施設などの整備や必要な支援を行います。
(育ちの場と機会の提供の取組)
第18条 市は、子どもが安全で安心して過ごすことのできる居場所づくりに努めます。
2 市は、地域において、子どもが様々な世代の人々と触れ合い、多様で豊かな経験をすることのできる場や機会の提供に努めます。
(意見表明や参加の促進)
第19条 市は、市政などについて、子どもが気持ちや考えを表明したり、参加する機会の充実を図ります。
2 市、保護者、施設関係者及び地域住民等は、子どもの意見表明や参加を促進するために、子どもの気持ちや考えを尊重するとともに、子どもの主体的な活動を奨励し、支援するよう努めます。
(子ども会議)
第20条 市は、子どもが意見を表明し、まちづくりに参加する機会として知立市子ども会議を開催します。
第5章 子どもの権利の侵害に対する救済と回復
(子どもの権利擁護委員会の設置)
第21条 市は、子どもの権利の侵害について、迅速かつ適切に対応し、その救済を図り、権利の回復を支援するため、知立市子どもの権利擁護委員会(以下「擁護委員会」といいます。)を置きます。
2 擁護委員会は、委員5人以内で組織します。
3 委員は、人格に優れ、子どもの権利、福祉、教育などに関して知識や経験のある人のうちから、市長が委嘱します。
4 委員の任期は2年とし、補欠の委員の任期は前任者の残りの期間とします。ただし、再任も可能とします。
(擁護委員会の職務)
第22条 擁護委員会は、次のことに取り組みます。
(1) 子どもの権利侵害について、子ども又はその関係者から相談を受け、その救済と権利の回復のために、助言や支援をすること。
(2) 権利の侵害を受けている子どもについて、本人又はその関係者から救済の申立てを受け、事実の調査や関係者間の調整をすること。
(3) 調査や調整の結果、必要と認めるときに、子どもの権利を侵害したものに対して、是正措置を講ずるよう勧告したり、制度などの改善を要請したりすること。
(4) 前号の規定による勧告や要請が速やかに実施されるよう、市に対し必要な取組を実施するよう要請すること。
(5) 勧告や要請を受けたものに対して、是正措置や制度などの改善状況などの報告を求めること。また、その内容を申立人などに伝えること。
(6) いじめ防止対策推進法(平成25年法律第71号)第28条第1項の規定による調査の結果について、同法第30条第2項に規定する調査を行うこと。
2 擁護委員会は、必要と認めるときは、子どもの権利に関係するものに出席を求め、子どもの権利の保障等について意見を聴くことができます。
3 擁護委員会は、必要に応じて市に対し施策を提言することができます。
4 委員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはなりません。その職を退いた後も、また同様とします。
(擁護委員会に対する支援や協力)
第23条 市は、擁護委員会の独立性を尊重し、その活動を支援します。
2 保護者、施設関係者及び地域住民等は、擁護委員会の職務に協力するよう努めなければなりません。
(勧告や要請への対応)
第24条 市は、擁護委員会から勧告や要請を受けたときは、速やかに勧告や要請に応じ、その対応状況などを擁護委員会に報告しなければなりません。
2 市以外のものは、擁護委員会から勧告や要請を受けたときは、速やかに勧告や要請に応じ、その対応状況などを擁護委員会に報告するよう努めなければなりません。
第6章 雑則
(委任)
第25条 この条例に定めるもののほか、必要な事項は、市長が定めます。
附 則
この条例は、平成24年10月1日から施行します。ただし、第5章の規定は、平成25年4月1日から施行します。
附 則(平成28年3月25日条例第17号)
この条例は、平成28年4月1日から施行します。