○豊前市男女共同参画推進条例
平成22年3月25日条例第14号
豊前市男女共同参画推進条例
前文
我が国においては,日本国憲法に個人の尊重と法の下の平等がうたわれ,男女共同参画の実現に向けた国際社会の動きと連動して様々な取組が進められてきました。男女共同参画社会の実現を21世紀の我が国の最重要課題と位置付け,総合的かつ計画的に推進するために平成11年6月に「男女共同参画社会基本法」が制定されました。
豊前市においても,平成16年3月に「男女がともに輝くまち ぶぜん」を基本理念に掲げ,豊前市男女共同参画行動計画を策定して様々な取組を進めてきました。しかしながら,今もなお,社会のあらゆる分野において性別による固定的役割分担や社会慣行は依然として根強く残っており,仕事と家庭の両立,女性に対する暴力の防止など男女共同参画社会の実現のために解決すべき多くの課題が残されています。また,少子高齢化の進行や社会経済情勢の変化に対応し,豊かで活力があり安心して暮らすことができる社会を実現するために,男女が互いにその人権を尊重し,責任も分かち合い,性別にかかわりなく自らの個性と能力を十分に発揮できる男女共同参画社会の実現が重要となっています。
このような状況を踏まえ,豊前市は,男女共同参画の推進を主要な政策として位置付け,市,市民及び事業者等が一体となって「男女がともに輝くまち ぶぜん」を実現するため,この条例を制定します。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は,本市の男女共同参画の推進に関し,基本理念を定め,市,市民及び事業者等の責務を明らかにするとともに,男女共同参画の推進に関する施策の基本となる事項を定めることにより,男女共同参画社会の形成を総合的かつ計画的に推進することを目的とする。
(定義)
第2条 この条例において,次の各号に掲げる用語の意義は,当該各号に定めるところによる。
(1) 男女共同参画 男女が,社会の対等な構成員として,自らの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保され,もって男女が均等に政治的,経済的,社会的及び文化的利益を受けることができ,かつ,共に責任を担うことをいう。
(2) 積極的改善措置 前号に規定する機会に係る男女間の格差を改善するため必要な範囲内において,男女のいずれか一方に対し,当該機会を積極的に提供することをいう。
(3) 市民 市内に居住し,通勤し,又は通学する者及び市内を活動の拠点とする個人をいう。
(4) 事業者等 市内において,事業又は活動を行う法人(個人事業主を含む。)及び団体をいう。
(5) セクシュアル・ハラスメント 相手の意に反した性的な言動により相手方の尊厳を傷つけ,不利益を与え,又はその生活環境を害することをいう。
(6) ドメスティック・バイオレンス 配偶者(元配偶者を含む。),恋人等親密な関係にある者に対してふるわれる身体的,精神的,性的,経済的又は言語的な暴力をいう。
(基本理念)
第3条 男女共同参画は,次に掲げる事項を基本理念として積極的に推進されなければならない。
(1) 男女の個人としての尊厳が重んぜられ,性別による差別的取扱いを受けることなく,個人としての能力を発揮する機会が確保されること。
(2) 性別による固定的な役割分担意識に基づく制度又は慣行を見直し,社会における活動の自由な選択に対して影響を及ぼすことのないよう配慮されること。
(3) 男女が社会の対等な構成員として,市における政策又は民間団体における方針の立案及び決定に共同して参画する機会が確保されること。
(4) 家族を構成する男女が,相互の協力と社会の支援の下に,子の養育,家族の介護,その他の家庭生活における活動について,家族の一員としての役割を円滑に果たし,かつ,当該活動以外の活動と両立できるよう配慮されること。
(5) 男女が対等な関係の下,生涯にわたり安全な環境の下で健康な生活を営み,互いの身体的特徴及び性に関する理解を深めるとともに,性と生殖に関して自ら決定し,個人の意思が尊重されること。
(6) 家庭,地域,職場,学校その他のあらゆる場から暴力や虐待,他の者を不快にさせる性的な言動が根絶されること。
(市の責務)
第4条 市は,前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)に基づき,男女共同参画の推進に関する施策(積極的改善措置を含む。以下「推進施策」という。)を総合的に策定し,及び実施する責務を有する。
2 市は,推進施策を実施するために必要な財政上の措置を講じなければならない。
3 市は,国,県その他の地方公共団体と連携を図るとともに,市民及び事業者等と協力して推進施策を実施しなければならない。
4 市は,市民及び事業者等の模範となるよう,自ら率先して男女共同参画の推進に取り組まなければならない。
(市民の責務)
第5条 市民は,基本理念に基づき,男女共同参画について理解を深め,地域,家庭,職場,学校その他の社会のあらゆる分野において,男女共同参画の推進に自ら積極的に取り組むよう努めなければならない。
2 市民は,市が実施する推進施策に協力するよう努めなければならない。
(事業者等の責務)
第6条 事業者等は,基本理念に基づき,事業又は活動において,男女が共同して参画する機会を確保するため,必要に応じ,積極的改善措置を実施するよう努めるとともに,家庭生活と両立することができるよう環境の整備に努めなければならない。
2 事業者等は,市が実施する推進施策に協力するよう努めなければならない。
(人権侵害行為の禁止)
第7条 すべての人は,地域,家庭,職場,学校その他の社会のあらゆる分野において,性別による差別的取扱い,セクシュアル・ハラスメント,ドメスティック・バイオレンス,その他男女間において相手方に身体的又は精神的苦痛を与える人権を侵害する行為を行ってはならない。
(情報の公表に際しての配慮)
第8条 すべての人は,公表する情報において,性別による固定的な役割分担を助長する表現,セクシュアル・ハラスメント及びドメスティック・バイオレンス等人権侵害に結びつく表現を行わないよう配慮しなければならない。
第2章 基本的施策
(男女共同参画に係る基本的な計画)
第9条 市長は,男女共同参画の推進に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため,男女共同参画の推進に関する基本的な計画(以下「男女共同参画行動計画」という。)を定めなければならない。
2 男女共同参画行動計画は,次に掲げる事項について定めるものとする。
(1) 総合的に講ずべき男女共同参画の推進に関する施策の大綱
(2) 前号に掲げるもののほか,男女共同参画の推進に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項
3 市長は,男女共同参画行動計画を策定し,又は変更しようとするときは,あらかじめ,豊前市男女共同参画審議会の意見を聴くとともに,広く市民の意見を反映させるための措置を講じなければならない。
4 市長は,男女共同参画行動計画を策定し,又は変更したときは,これを公表しなければならない。
5 市長は,社会の情勢の変化等に対応するため,必要に応じて男女共同参画行動計画の見直しを図らなければならない。
6 市長は,毎年,男女共同参画行動計画の実施状況について,報告書を作成し,公表しなければならない。
(施策の策定等に当たっての配慮)
第10条 市は,あらゆる施策を策定し,及び実施するに当たっては,男女共同参画の推進に配慮しなければならない。
(市民の理解を深めるための措置)
第11条 市は,市民が男女共同参画についての関心と理解を深めることができるように,必要な教育及び学習の機会を提供するものとする。
2 市は,広報広聴活動等を通じて,基本理念に関する市民及び事業者等の理解を深めるよう適切な措置を講ずるものとする。
3 市は,基本理念に関する市民の理解を深めるため,幼児教育(保育園及び幼稚園),学校教育(小学校及び中学校),社会教育その他の教育活動にかかわる者に対して適切な支援を行うものとする。
(市における男女共同参画推進の取組)
第12条 市は,政策の立案及び決定の過程における男女共同参画の推進のために,次に掲げる事項に積極的に取り組むものとする。
(1) 市長その他の執行機関の附属機関として設置する審議会等に委員を任命,委嘱又は選任するときは,男女の委員の数について,一方の性に偏らないように努めること。
(2) 男女の別なく,職員の能力及び意欲に応じた登用を図るため,女性職員に係る職域の拡大,能力向上の機会の確保に努めること。
(3) 職員が育児休業,介護休暇等家庭生活を支援する制度を性別にかかわりなく活用できる職場環境の整備に努めること。
(家庭生活とその他の活動との両立支援)
第13条 市は,性別にかかわりなくすべての人が,共に家事,子育て,介護その他の家庭生活における活動と職場,学校及び地域等における活動とを両立して行うことができるよう,適切な支援に努めなければならない。
(農林水産業等における男女共同参画社会の形成の促進)
第14条 市は,農林水産業,商工業等の自営業において,男女が社会の対等な構成員として,自らの意思によって,その経営又はこれらに関する活動若しくは地域における活動に共同して参画する機会を確保するため,活動の支援及び必要な環境整備を行うよう努めなければならない。
(調査研究)
第15条 市は,男女共同参画の推進に関する施策を効果的に実施するため必要な事項の調査研究を行うよう努めるものとする。
(推進体制の整備等)
第16条 市は,男女共同参画の推進に向けて,推進施策を総合的に策定し,実施し,評価するために必要な体制の整備に努めるものとする。
2 市は,市民及び民間の団体による男女共同参画社会の形成に関する取り組みの拠点となる施設を設置するものとする。
(苦情及び相談への対応)
第17条 市が実施する施策で,男女共同参画の形成に影響を及ぼすと認められる施策について苦情の申出があった場合は,関係機関と連携して適切な措置を講ずるよう努めるものとする。
2 性別による差別的取扱い,その他の男女共同参画社会の形成を阻害する要因によって人権が阻害された場合の市民からの相談に関し,市は,速やかに関係機関と連携し適切な措置を講じなければならない。
3 市は,前2項に規定する苦情の申出及び相談に関する問題解決を図るため,相談窓口を置かなければならない。
第3章 豊前市男女共同参画審議会
(男女共同参画審議会の設置)
第18条 本市における男女共同参画の推進を図るため,豊前市男女共同参画審議会(以下「審議会」という。)を置く。
2 審議会は,市長の諮問に応じ,次に掲げる事項に関して調査及び審議を行う。
(1) 男女共同参画行動計画に関すること。
(2) 男女共同参画行動計画の実施状況に関すること。
(3) 前2号に掲げるもののほか,男女共同参画社会の形成に関すること。
3 審議会は,前項各号に規定する事項に関し,市長に意見を述べることができる。
4 審議会は,10人以内の委員をもって組織し,委員は,次に掲げる者のうちから市長が委嘱する。
(1) 市議会議員
(2) 学識経験者
(3) 市民
5 男女のいずれか一方の委員の数は,委員の総数の10分の4未満であってはならない。
6 委員の任期は,2年とする。ただし,再任を妨げない。
7 補欠の委員の任期は,前任者の残任期間とする。
8 前各項に定めるもののほか,審議会の組織及び運営に関し必要な事項は,規則で定める。
第4章 雑則
(委任)
第19条 この条例の施行に関し必要な事項は,規則で定める。
附 則
この条例は,平成22年4月1日から施行する。